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しおりを挟む真と杏は、一緒に詩央の様子を見ていた。
「杏、君はもう寝なさい。後は私が」
「真さんこそ、眠ってください。疲れたでしょう?」
そんなことを言い合いながら、心配な眼差しで詩央を見ていた。
(しかし、詩央くんが杏の手を離さないとはな)
てっきり、私にすがってくると思っていたが。
詩央の好意は、解っていた。
ほとんど毎日、店で顔を合わせるのだ。
また抱いて欲しい、とあからさまな誘惑を受けることもあった。
だが、杏を恋人と決めてからの真は、節度を守っていた。
「詩央くんは、あくまでスタッフだから、ね」
そう言って、誘いを断っていた。
「……詩央さんは、真さんのことが好きなんですよね」
「え!? いや、それは」
ぽつりとこぼした杏の言葉は、真を慌てさせたが、すぐに立ち直った。
「うん。この子は、私のことが好きだ」
だがね、と続けた。
「私は、杏のことが誰より好きなんだよ。だから、詩央くんの願いはきけない」
「嬉しいけど、悲しいです」
真が詩央と寝た話を聞いた時、胸がつぶれるほど辛かった。
(今、同じ思いを、詩央さんは味わっているんだ)
そう思うと、手放しで喜べなかった。
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