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しおりを挟む急いだつもりだったが、真の帰宅は午前2時近くになってしまった。
だがしかし。
「お帰りなさい!」
「な、何だ。寝てなかったのか!?」
「ご主人様を放って、自分だけ寝るわけにはいきませんから」
「ご主人様、と来たか。嬉しいな」
杏はさっそく、真のジャケットに手を掛けている。
「お風呂、湧いてます。お食事、済まされましたか?」
「ああ、何かイイね。こういう、家庭的な雰囲気」
一匹狼の真だが、囲ったペットにこうやって、ちやほやされることは大好きだ。
「ではまず。お帰りなさいのキス、をしてもらおうか」
「え」
「え?」
真は、瞬時に理解した。
杏は、ドン引きしたのだ。
「え、あ。冗談だ!」
「そ、そうですよね。冗談ですよね!」
軽く食事ができれば嬉しい、などと取り繕いながら、真はジャケットを脱いでタイを緩めた。
(まさか、思いきり拒否られるとは)
少々自分に自信を無くしながらキッチンへ行くと、そこには良い香りが漂っていた。
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