ロマンス ～草食アルファと肉食オメガの間に、夢より素敵なリアルが始まりました！～

1話 反撃開始

　章と加瀬、二人しかいない夜の事務所に、着信音が響いた。
　すぐに加瀬が通話を繋ぎ、部下からの情報に耳を傾ける。
「現在、速水はホテル・アスカで、ニューイヤー・パーティーに出席中。解った、良くやった」
　その言葉を、章がすぐさま紙にメモする。
　そんな二人三脚の行動が、何度も続いた。
　情報は多く寄せられたが、有益なものは少なかった。
　秋に飼い始めた子犬の犬種、だとか。
　お歳暮には漆器の飾り皿を贈った、だとか。
　真面目な章は、そんなネタからも、何とか志乃につながる情報をひねり出そうと唸る。
　そうするうちに、加瀬の声色が変わる情報が舞い込んできた。
「年末に、組の系列不動産から、マンションを買った？」
　どこだ、そこは。住所は解るか？
　加瀬は章と視線を交わしながら、緊迫した応答を続けていたが、通話を切るとうなずいた。
「章さん、聞いての通りだ。おそらく志乃くんは、そこに監禁されている」
「すぐに。今すぐに、向かいましょう！」
「ちょっとだけ、待ってくれ」
　加瀬は端末を操作すると、若衆のうち選りすぐりの数名に、メールを送信した。

『〇〇市△△区、ロワイヤル・マンションに大至急集合。
　カチコミだ。
　気を引き締めてかかれ』

　これで良し、と端末をポケットにねじ込むと、加瀬は章に声を掛けた。
「さあ、行くぞ。章さん……、って。あれ？」
「加瀬さん、速く！」
　章はすでに、ドアの前まで移動して、身をせわしく揺すっていた。