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しおりを挟む今まで付き合った人間の中には、ヤクザの情夫になることをステータスに感じる者もいた。
玄馬に腕を絡め、街を颯爽と歩く。
そんな自分を、カッコいいと勘違いする人間がいた。
(しかし、この幸樹ときたら)
『私は、極道者だ。九丈組の、頭だ。それでも、私は素敵かな?』
『そういう肩書を忘れてしまう何かを、九条さんは持っています。強く、惹かれます』
九条会の組長でない、ただの九条 玄馬を好きになってくれたのか。
(いや、深入りはダメだ)
もともと、あのカフェを楽に手に入れるために近づいた。
それだけのはずだ。
だがしかし。
「幸樹、シャワーを浴びてくるといい」
「はい、玄馬さん」
グラスを受け取りながら、玄馬は愕然とした。
(私は彼を、『幸樹』と呼んだのか?)
そして幸樹は私を、『玄馬さん』と呼ぶ。
「まずいぞ、これは」
すでに深入りに片足突っ込んでしまっている予感を、玄馬は味わった。
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