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それでも父に遠慮して、好意を母に伝えなかった男・遠山。
だからこそ、お母さんも僕を託したに違いない。
18歳になった幸樹は、そんな風に思うようになっていた。
「いいなぁ。そのうち僕にも、恋とかできるかな」
「人間、恋をして一人前になれるのさ」
「新庄くん、すまないけど表をちょっと見てきてくれる?」
「あ、はい!」
また話をとがめられたと考えた新庄だったが、マスターは曇った表情だ。
「さっきから、客足がさっぱりだ。いつもこの時刻に見える常連さんも、やって来ない」
「そういえば、そうですね」
新庄は軽快にドアを開け表に出て行ったが、次の瞬間には3倍速のスピードで戻ってきた。
「た、大変です! 何か、人相の悪い人たちが、店の周りをウロウロしてます!」
どういうことだ、と遠山が思いを巡らすより前にドアベルが鳴り、背の高い男が入ってきた。
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