君に会いに行こう

大波小波

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「新庄くん。幸樹くんは大切な預かりものなんだ。妙なこと、吹き込まないで」
「すみません!」
 遠山は、幸樹が中学生の時に亡くなった母から、彼を託された。
 母子二人の家庭で育った幸樹は、幼いころからよくこのカフェに連れられて来たものだ。
 その母は、幸樹の父をいつもこう言っていた。

『お父さんは、人の上に立つお仕事をする、立派な方よ』

 その言葉からすると、どうやら父は生きているらしい。
 経済的に困っているわけではないので、生活費は父が用立ててくれているのだろう。
 そんな父に、幸樹は常日頃から会ってみたいと考えていた。

『どんなお父さんなんだろう。マスターの遠山さんみたいに、優しい人だといいな』

 だが母は、一度も幸樹を父に会わせることなく、亡くなった。
 独りぼっちになってしまった幸樹を引き取ってくれたのが、遠山だった。
 母の遺言、ということで、幸樹は遠山のカフェにお世話になることになったのだ。


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