月まで連れてって 恋に戸惑う闇クラブオーナー・アルファ×弟の為に身を売る健気・オメガ ～上下関係を越えた愛が生まれる～

5

　遥の両親は、良識のある純朴な人間だった。
　実家まで遥を送った了を、是非にと上にあげてくれた。
　床の間のある座敷の上座に通し、美味しいお茶を勧めてくれた。
「息子が、お世話になっております」
「遥は、きちんとお勤めできていますでしょうか」
　そんな両親の言葉に、了は横目で遥をうかがった。
　彼は、縋るような視線をよこしている。
　どうか秘密にしてください、と心の声が聞こえてくるようだ。
（闇クラブのことは、話していないんだな）
　そう判断した了は、両親が安心できる返事をした。

「真面目で誠実な遥くんには、私もずいぶんと助けられております」
　ボーイズクラブで働く、と言った時には、両親に反対されたことを、以前遥から聞いている。
　そういった職種への偏見も、了は少しずつほどいていった。
　もちろん、遠山に刺されそうになったことは、内緒だ。
　そんなことを口にすれば、遥はすぐさま実家に閉じ込められるだろう。

「おかげさまで、治療費も滞りなく払えております」
「葛城さんの、おかげです」
「いいえ、全ては遥くんの頑張りですよ」
　両親と了のやり取りに、遥は身を縮めていた。