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しおりを挟む「郁実くん。ケーキ作りながら、俺のこと想ってくれた?」
「はい」
「五条さん、父親の前で息子を口説くのやめてくださいよ」
ケーキはその場で切り分けられ、美味しいコーヒーと共に颯真を喜ばせた。
「美味い! あぁ、もう、とっても幸せだ!」
「残りは、もう少し日を置いてください。風味が増しますよ」
「いや、何かもう。感激で、一気食いしそう!」
ケーキのブランデーに酔ったのか、郁実の頬は少し赤い。
それが妙に色気を醸し、颯真の胸を射抜いていた。
(郁実くん、可愛いなぁ……!)
その頬を染めた郁実が、颯真に顔を寄せて来るのだ。
気持ちは、高まる一方だった。
「五条さん、コーヒーのお替りどうですか?」
「ね、郁実くん。俺のこと、『颯真さん』って呼んでくれないかな」
思わず、そう口走っていた。
一線を、軽く越えてしまっていた。
「えっ? でも……」
颯真の申し出に、郁実はためらった。
相手は、雲の上の人である。
人気絶頂の、イケメン俳優なのだ。
(少し懇意にしてもらったからって、馴れ馴れしいんじゃないかな……)
困惑する郁実に、颯真は重ねてお願いした。
「颯真さん、って呼んでよ!」
両手を合わせて、拝む姿が愉快だ。
郁実は、にっこり笑った。
「じゃあ……颯真さん!」
「ありがと~!」
温かくきらめくクリスマスの光の中で、二人は幸せだった。
カフェがあって、父さんがいて、颯真さんがいる。
本当に、幸せなクリスマス。
ジャズを聴き、コーヒーを飲み、写真を撮った。
思い出に残る、クリスマスだった。
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