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「俺と一緒に本を読んで、感想言い合ってくれる人が、できるなんて」
 嬉しくて、涙が出るよ。
 コンタクトレンズを入れているので、目をこすることができない。
 ぽろぽろと、智樹はそのまま涙をこぼした。

「泣かないで、片岡くん」
 彼の涙を、茉以は指先でぬぐってやった。
「あれ? 僕も何だか……」
 茉以の目からも、涙がこぼれてきた。
「何で? 悲しくも嬉しくもないのに?」
「それはたぶん、もらい泣き、だよ」
「もう。僕たち二人とも、泣き虫だなぁ」

 泣き笑いをしながら、二人で顔を見合わせた。
「これからよろしく、百瀬くん」
「こちらこそよろしく、片岡くん」
「あの、さ。下の名前で呼んでも、いい?」
「もちろんだよ。僕たち、付き合ってるんだから」

 互いに、姓ではなく名で呼び合った。
 茉以くん。
 智樹くん。
 何度も呼び合い、くすくす笑う。

 茉以。
 智樹。
 そう呼ぶようになった時、茉以は少しだけ首を傾げた。
「ね、智樹。キスしようか」
「え!?」

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