23 / 31
11
しおりを挟む「はい、昨日借りた傘。返すね」
「いつでも良かったのに」
今日は、いい天気に晴れている。
夕焼けが、綺麗だ。
帰り道、茉以は智樹のアパートの前で、名残惜しそうに留まっていた。
「もう少し片岡くんの家が遠かったら、一緒に寄り道とかできるのにな」
「じゃあ、上がってく?」
「いいの?」
昨日お邪魔したばかりの智樹の家に、茉以は再び入った。
心なしか、きれいに整頓されている。
「そういえば、さ。本、少し読んだよ。一番最初の『さみだれ』って小説」
「あれはいいよね。俺、あの短編集の中で、一番好き」
二人はお茶を飲みながら本を開き、ああだこうだと感想を言い合った。
それは楽しい、心を潤す時間だった。
「ここで、芳郎はなぜ泣いたんだと思う?」
「それはもちろん、悲しかったから、じゃないかな?」
茉以は、素直な思いで答えた。
しかし智樹は、そうじゃない、と柔らかな笑顔を向けた。
「嬉しかったんだ。嬉しくて、泣くこともあるんだよ。人って」
「片岡くん……?」
智樹の目から、ぽろりと涙が一粒こぼれた。
23
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
家の中で空気扱いされて、メンタルボロボロな男の子
こじらせた処女
BL
学歴主義の家庭で育った周音(あまね)は、両親の期待に応えられず、受験に失敗してしまう。試験そのものがトラウマになってしまった周音の成績は右肩下がりに落ちていき、いつしか両親は彼を居ないものとして扱う様になる。
そんな彼とは裏腹に、弟の亜季は優秀で、両親はますます周音への態度が冷たくなっていき、彼は家に居るのが辛くなり、毎週末、いとこの慶の家にご飯を食べに行く様になる。
慶の家に行くことがストレスの捌け口になっていた周音であるが、どんどん精神的に参ってしまい、夜尿をしてしまうほどに追い詰められてしまう。ストレス発散のために慶の財布からお金を盗むようになるが、それもバレてしまい…?
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる