金曜日の少年～「仕方ないよね。僕は、オメガなんだもの」虐げられた駿は、わがまま御曹司アルファの伊織に振り回されるうちに変わってゆく～

4

　バレンタインデーに、撮影会。
「少々、疲れる一日だったな。バスタイムにしよう」
　駿も、一緒に。
　そんな伊織の言葉を、駿は冗談と思っていた。
　伊織は、彼専用のバスルーム。
　駿は、従者用のバスルーム。
　二人はいつも、別々に湯を使っていたからだ。
　ところが伊織は、素裸の駿を、自分のバスルームへと招き入れたのだ。
「たまには私が、駿の背中を流してあげよう！」
「伊織さま、やめッ！　く、くすぐったいです！　それに、そこは背中じゃありません！」
　ソープを泡立て、笑い合いながら互いの性器を弄った。
「駿、そろそろ降参じゃないのかな？　脚が内股になっているぞ？」
「も、ヤだ。伊織さま、そこ、ダメぇえ……」
　もう少し。
　あと少しで……。
　快感の爆ぜる寸前に、伊織の手は駿から離れた。
「寒いだろう？　続きは、バスタブで」
「あ……」
　伊織の愛撫で、駿はかっかと熱くなっているのだが。
　相変わらず、少し意地悪な伊織だ。
　シャワーで体を流し、駿はバスタブに近づいた。
　腕を入れ、湯加減を確かめる。
　かけ流しの湯がふんだんに注ぎ込む浴槽の湯加減は、ちょうどいい。
「伊織さま、どうぞ」
「うん」
　伊織に続いて、駿も浴槽に入った。
　二人で一緒にお風呂に入るのは、初めてだ。