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「伊織さま、そんな……ッ!」
「いいから駿は、大人しくしていたまえ」
伊織は駿の性器に手をやると、優しく摺り始めた。
摺りながら、ぽつりぽつりと、その内心を伝え始めた。
「実は今、散々迷っていることがある」
「え?」
息を弾ませながら、駿は耳を傾けた。
「進路のことだ」
伊織は、幼稚園から大学まで一貫教育の学校に通っていた。
中等科までは。
「私が中等科にいたころ、父が倒れてね」
過労、ということで、退院後は天宮司邸で療養をしていた父。
大丈夫だ、心配ない、と父は言った。
「しかし私は、不安だったんだ。このまま、父が他界してしまうのではないか、と」
だから、エスカレーターで高等科には進まずに、この屋敷から通える学校を受験した。
駿は、伊織の話に聞き入っていた。
「そうだったんですか……」
不思議だとは思っていた。
地区で一番偏差値は高いとはいえ、伊織さまほどの学力と財力のある人が、僕と同じ学校だなんて。
「自分勝手に決めて実行したものだから、脳が溶けるほど叱られたよ」
もうすぐ、卒業だ。
そう言って、伊織は少しきつく駿の先端に指先を入れた。
「ん、あ……ッ」
そうだった。
伊織さまは、いつまでも僕の傍にいてくれるわけじゃないんだ。
かすかな痛みと心の痛みで、涙が零れた。
「大学をどうするか。どうしようか、駿」
伊織の瞳は、揺れていた。
「いいから駿は、大人しくしていたまえ」
伊織は駿の性器に手をやると、優しく摺り始めた。
摺りながら、ぽつりぽつりと、その内心を伝え始めた。
「実は今、散々迷っていることがある」
「え?」
息を弾ませながら、駿は耳を傾けた。
「進路のことだ」
伊織は、幼稚園から大学まで一貫教育の学校に通っていた。
中等科までは。
「私が中等科にいたころ、父が倒れてね」
過労、ということで、退院後は天宮司邸で療養をしていた父。
大丈夫だ、心配ない、と父は言った。
「しかし私は、不安だったんだ。このまま、父が他界してしまうのではないか、と」
だから、エスカレーターで高等科には進まずに、この屋敷から通える学校を受験した。
駿は、伊織の話に聞き入っていた。
「そうだったんですか……」
不思議だとは思っていた。
地区で一番偏差値は高いとはいえ、伊織さまほどの学力と財力のある人が、僕と同じ学校だなんて。
「自分勝手に決めて実行したものだから、脳が溶けるほど叱られたよ」
もうすぐ、卒業だ。
そう言って、伊織は少しきつく駿の先端に指先を入れた。
「ん、あ……ッ」
そうだった。
伊織さまは、いつまでも僕の傍にいてくれるわけじゃないんだ。
かすかな痛みと心の痛みで、涙が零れた。
「大学をどうするか。どうしようか、駿」
伊織の瞳は、揺れていた。
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