金曜日の少年～「仕方ないよね。僕は、オメガなんだもの」虐げられた駿は、わがまま御曹司アルファの伊織に振り回されるうちに変わってゆく～

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　そういえば、と駿は思い出した。
「伊織さまは、意外に寒がりだ」
　学校にも、コードレスのフットウォーマーを持参しているくらいなのだ。
「ひざ掛け！　ひざ掛けにしよう！」
　マフラーとは違い、ひざ掛けは、さほど表に出ない。
　もし、デザインが伊織の好みでなくても、目立たないので気にならないだろう。
「そして！　もう、こうなったら、手編み！」
　クラスの数名が、最近せっせと編み物をしている姿を目にしている。
　あれはきっと、仲の良い友達や、付き合っている相手に贈るためだ。
　駿はネットで動画を検索し、初心者でも簡単にできる、というかぎ針を使った編み方を見つけた。
「これなら、僕にもできそう」
　さらに、クリスマスまでに間に合いそうだ。
　駿は、スマホでカレンダーを調べた。
「えっと、12月24日は……」
　火曜日だった。
「金曜日じゃないのか……」
　盛り上がった気分が、一気に冷えてしまった。
　いつ、渡せばいいだろう。
　火曜日の少年の前で手渡すなんて、できない。
　いいさ。
　お屋敷の人に、預けておけばいい話。
　再び駿は天井を見上げて、思わずにじんだ涙を目の奥に収めた。