この恋は運命

大波小波

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 響也の父は腕を組み、母はティーカップを口にした。

 麻衣の父は、ただ息子を見て小さくうなずいている。

 そんなしばしの沈黙の後、響也の母・凛子は静かに言った。

「では。響也は、麻衣くんとの婚約を解消するのですね?」

「いや、凛子。それは……」

「壱郎さんは、黙ってください」

 響也さんに、訊いているのです。

 ピリッとした凛子の声だったが、響也はそれに柔らかく応えた。

「いいえ。私は、麻衣くん。いえ、麻衣との婚約を、解消しません」

 穏やかだが、芯の入った声だ。

 響也の決意が、うかがえる。

 そんな、声だった。

「確かに私は、過去に多くの女性を不幸にしてきました」

 ただ幸いなことに、凛子が手を打ったおかげで、彼女らは今では幸せになっている。

 それを承知で、響也は言った。

「もし何か私に罰をとおっしゃるのでしたら、どんな厳しい制裁でも受ける覚悟です」

 ですが。

「ですが、麻衣だけは。私は麻衣とだけは、パートナーとしてこれからも共に歩んでいきたいのです」

「それでも、駄目だ、と言ったら?」

 厳しい壱郎の言葉にも、響也は応じた。

「飛鳥の家を、出ます」

 力強い、宣誓の響きを持つ、響也の言葉だった。

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