この恋は運命

大波小波

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1話 響也の欠点

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 ずいぶんとだらしない格好と、ルーズそうな性格の哲郎だったが、医師としての腕は確からしかった。

 代々医者の家系に生まれついた彼は、曽祖父の武郎を心から尊敬している。

 その影響もあって、外科医の他に、オメガ男性の産科医としての免許も持っている。

 有名難関大学の博士課程を経て、実家の大きな医院で父や母と共に、最前線で活躍している……、のだが。

「早乙女 麻衣くん。響也とは縁を切って、もっといい人を見つけなさい」

 こんなことを、言うのだ。

 癖の強い黒髪をペンで掻きながら、眼鏡の奥の細い目をさらに細めて、何だか辛そうなのだ。

 細面で整った顔立ちを歪めて、溜息をついている。

 黙っていれば相応にイケメンなのだが、この言葉に麻衣は唇を尖らせた。

「どうして先生は、そんなことをおっしゃるんですか? 僕は、響也さんが好きだから、このお屋敷に来たのです」

「若いなぁ。あいつじゃあ、君を幸せにできないよ」

「なぜ、ですか?」

「それはね……」

 哲郎が何か言う前に、診察室へ新しい人間が入って来た。

「哲郎。麻衣に、余計なことを吹き込んでいるんじゃないだろうな?」

 それは、今は遅い昼食を摂っているはずの、響也だった。

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