102 / 119
6
しおりを挟む駿佑は、薄暗がりの中にいた。
どちらに進むか、迷う。
こっちへ、行ってみようか。
何か知らない、初めての世界が広がっている気がしたのだ。
「ん?」
そこへ、足元に擦り寄ってくるネコがいる。
「お前は……ミケか?」
元町さんが、可愛がっていたネコ。
ひどい殺され方をして、彼女は泣いていた。
だが、もう一人、泣いていた人間がいたはずだ。
『なぜ、泣く』
『すみません。ちょっと、いろいろ考えちゃって』
ネコの死因や老婆の心傷を想像しただけで、涙を流す。
そんな心優しい、オメガの少年が。
「聖」
そうだ、聖だ。
「早く、彼の元へ帰らないと」
掃除は、完了した。
私はもう、掃除人を辞めるんだ。
彼の元で、きれいな商売を始めるんだ。
愛する聖の元で。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
24
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる