胸に咲くは純白の花

大波小波

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 駿佑は、薄暗がりの中にいた。
 どちらに進むか、迷う。
 こっちへ、行ってみようか。
 何か知らない、初めての世界が広がっている気がしたのだ。
「ん?」
 そこへ、足元に擦り寄ってくるネコがいる。
「お前は……ミケか?」
 元町さんが、可愛がっていたネコ。
 ひどい殺され方をして、彼女は泣いていた。
 だが、もう一人、泣いていた人間がいたはずだ。

『なぜ、泣く』
『すみません。ちょっと、いろいろ考えちゃって』

 ネコの死因や老婆の心傷を想像しただけで、涙を流す。
 そんな心優しい、オメガの少年が。
「聖」
 そうだ、聖だ。
「早く、彼の元へ帰らないと」
 掃除は、完了した。
 私はもう、掃除人を辞めるんだ。
 彼の元で、きれいな商売を始めるんだ。
 愛する聖の元で。

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