胸に咲くは純白の花

大波小波

文字の大きさ
上 下
84 / 119

4

しおりを挟む

「明日の午後に、聖のマンションへ配達してもらうからな」
「はい」
 聖は、駿佑の大きな手を握った。
「ありがとうございます!」
「お、おい」
 突然の、聖の積極的な仕草に、駿佑は戸惑った。
 だが聖は、無邪気に笑うのだ。
「手をつないで、残りの蘭を見て回ってもいいですか?」
「うん……」
 ここは、天国か。
 見たこともない美しい花々が咲き誇る中を、愛しい人と手をつないで歩く。
 ここが天国でなくて、何だろう。
「……さん。駿佑さん!」
「あ? ああ、何だ?」
 出口です、と聖は名残惜し気につないだ手を離した。
「楽しかったな」
「はい」
 また来よう、と言うと、聖は嬉しそうな顔をした。
「良かった。駿佑さんには退屈かも、って思ってたんです」
「そんなことは、ない」
 君と一緒なら、どこに居ても楽しい。
 もう一度、駿佑は聖の手を握った。
 優しく握手をし、二人は植物園を後にした。

しおりを挟む

処理中です...