胸に咲くは純白の花

大波小波

文字の大きさ
上 下
83 / 119

3

しおりを挟む

「どれがいい? 聖の好きな蘭を選べ」
「一つに絞るのが、難しいですね」
 しばらく、ああでもない、こうでもない、と頭をひねっていた聖だったが、最後に駿佑の方を見た。
「駿佑さんが、選んでください」
「私が、か?」
「僕にプレゼントしてくれるなら、どの蘭を選びますか?」
 そうだな、と駿佑は蘭を眺めやった。
「これだな」
 それは色とりどりの蘭の中で、ひとつだけ静かな空間を作っている、白い胡蝶蘭だった。
 まるで高級生花店に飾ってあるような、豪華な3本立ちの鉢植えだ。
「こ、こんな高価なもの!」
「私に選べ、と言ったじゃないか」
 それに。
「君にぴったりの花だ、聖」
「え……」
 聖が照れてもじもじしている間に、駿佑は会計を済ませてしまった。

しおりを挟む

処理中です...