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1話 発情期
しおりを挟む少し眠気のやって来る、午後の授業。
出題された例文を、それぞれで静かに考え解く生徒たちを見守っていた教師が、そっと聖の席に近づいた。
「白井、ちょっと」
「はい」
聖は顔を上げて、教師を見た。
何だろう。
ぼんやり、駿佑さんのことを考えていたことが、バレたのかな?
しかし教師は、体をかがめて小声で言った。
「すぐに、保健室へ行きなさい。フェロモンが出ているかもしれない」
「え?」
「早く」
「は、はい」
教室を出て、廊下を小走りで聖は駆けた。
保健室へ入ると、養護教諭がすぐに薬棚から小箱を取り出した。
「白井くん、発情抑制剤は飲んでる?」
「いいえ。僕はまだ発情期を迎えていませんから」
じゃあ、これを飲みなさい、と養護教諭は錠剤を渡してきた。
「でも、僕」
「始まったみたいよ、発情期。かすかにフェロモンの気配がするわ」
聖の胸は、とたんにざわめいた。
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