胸に咲くは純白の花

大波小波

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 途中アニマルショップへ立ち寄ってレンタルの蛇を返し、二人はマンションに到着した。
「聖くん。まだ夕刻だけど、一杯やってもいいか?」
「お酒、ですか」
 どうぞ、と聖が勧めると、駿佑はビールではなくジンをグラスに注いだ。
 くい、とグラスを傾ける駿佑を見て、聖は思った。
(お酒で、掃除の汚れを清めてるんだな)
 今回は、僕のせいで。
 それを思うと、聖の胸は痛んだ。
「あの、駿佑さん」
「ああ、すまない。一杯だけだから」
 すぐに、夕食の支度をするよ、と立ち上がりかけた駿佑の肩に手を置き、聖はソファに座らせた。
 そして、そっとキスをした。
「……聖くん」
「汚れは、今夜僕に清めさせてください」
「待ってくれ。それは」
「お風呂、入ってきます」

『汚れは、今夜僕に清めさせてください』

 それは、つまり……。
 駿佑は、とまどった。
(聖くんは、まだ少年だぞ?)
 どうしようか。
 グラスに残ったジンを干すことも忘れ、駿佑は固まってしまっていた。


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