胸に咲くは純白の花

大波小波

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「聖も、殴りたかったか?」
「いいえ」
「腹の虫は、治まった?」
「はい」
 行こうか、と駿佑は聖の背を押した。
 温かい、優しい手。
 こんなに優しい駿佑さんが、掃除となると悪魔に変わる。
(どっちが、本当の駿佑さんなんだろう)
 そこまで考えて、聖は唇に指を這わせた。

『おまじないだ』

 慈しみ深い、キスだった。
(駿佑さんは、優しい人に決まってる)
 車に乗り込み、二人は雑居ビルを後にした。

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