胸に咲くは純白の花

大波小波

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 どうやって起きたか、解らない。
 どうやって身なりを整えたか、覚えていない。
 どうやってマンションに帰ったか、記憶がない。
 ただ、聖は帰宅と同時にバスルームへ駈け込み、思いきり吐いた。
 下腹に力を入れ、散々ぶち込まれた精液を掻き出した。
 熱いシャワーを流しながら、聖は体に残された凄惨な刻印を清めた。
「聖くん、何があったんだ!?」
「何でもありません。何でもないんです!」
 珍しく慌てた様子の駿佑が、バスルームに駆け込んできた。
「何でもないこと、ないだろう! 誰にやられた!?」
「駿佑さん……」
 知られたくなかった。
 こんなに汚れた、みじめな僕を。
 しかしこの人は、僕の様子を一見しただけで、何があったか悟ってしまったんだ。
 そう思うと、涙があふれた。
「駿佑さん……駿佑さん!」
 濡れた体も構わず、駿佑は聖を抱きしめた。
 髪を撫で、泣きじゃくる少年をなだめた。
(先に始末する掃除が、できてしまったな)
 そして、その瞳には復讐の炎が燃えていた。


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