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1 出会いと別れ
しおりを挟む高く澄んだ、秋の夜空。
星々が少し暗いのは、育ち始めた明るい月のせいばかりではないだろう。
華やかな夏の星座は、すでに西の空。
控え目な秋の星座に、夜空の主役を譲っている。
「やっぱり、少し冷えてきたな」
両開きの軋む窓を閉め、加古 青葉(かこ あおば)はトレイを手に持ち直して広く長い回廊を進んだ。
ここは、安藤(あんどう)邸。
大正時代に造られた、歴史ある洋館だ。
青葉は、そこの若き当主の部屋の前で止まった。
「智貴(ともたか)さま、温かいお飲み物をお持ちしました」
中からの返事を確認すると、青葉はカップを揺らさないよう気を配りながらドアを開けた。
「やぁ、青葉。ありがとう」
「今夜は、少し冷えますね」
うん、と智貴は窓辺から青葉の元へ歩いた。
「ちょうど、温かいものが欲しくなっていたところだ」
「今夜は、ホットレモネードをお持ちしました」
「嬉しいね」
智貴はカップの飲み物を一口飲むと、青葉の髪に触れた。
「明日だったね、誕生日」
「はい。ようやく18歳になります」
そこで青葉は、はにかんで下を向いた。
長かった。
15歳でこのお屋敷に入ってから、3年。
18歳になったら、智貴は青葉と同衾すると約束していた。
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