ベータの俺にできること 【俺はただ、波留を悲しませたくないだけなんだ】

7

　
「俺んち、来るだろ。クリスマスパーティーやろうぜ」
「今夜のメニューは？」
「すき焼き」
「全然クリスマスっぽくないじゃん！」
「いい肉、奮発したぜ？　食いたくないの？」
「行く！　食べる、肉！」

　波留の手を握り、粉雪のちらつく道を歩きながら、紫苑は考えた。
（ほんの二日前だよな。こうすることが許されたのは）
　今まで耐え忍んできた、波留への想い。
　ようやく言えた、好きという言葉。
（でもまだ、波留からはハッキリ伝えてもらってないんだよな）
　
『紫苑、好きだよ。大好きだよ』

　早く、こんな言葉を波留の口から聞きたい。
　しかし、焦るのはよそう。
（今まで我慢してきたんだ。もう少しくらい、余裕で待てる）
　何せ、波留は失恋したばかりなのだから。
　少しだけ、紫苑は手を握る力を強くした。
　波留を支えるために。