ベータの俺にできること 【俺はただ、波留を悲しませたくないだけなんだ】

大波小波

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「何? 電話してたのか?」
「うん、もう済んだところ」
 来夢は、温かなグリューワインを手にして戻ってきた。
 二人は、イルミネーションで飾られた広場のベンチに掛けた。
「俺たち、ようやく結ばれるんだな」
 雰囲気を作ろうと、そんな浮ついた言葉を紡ぐ来夢が、由樹にはひどく滑稽だった。
「まだ、だよ。最後の審査が残ってるから」
「え? 審査?」
 由樹は、長い脚を高く組んだ。
「僕の靴に、キスを」
「な、何言ってるんだ?」
「できないなら、これでサヨナラ」

 来夢は、由樹の真意を測れずにいた。
 彼の顔色をうかがい、本気かどうか確かめた。
 そんな来夢に微笑みかけ、由樹は彼が安心できるようにしてあげた。
「こういうプレイ、嫌い?」
「何だよ、そういうことかよ」
 だらしなくニヤけた顔で、来夢は由樹の足を手に取った。
(由樹はSっ気があるのか。でもすぐに、従順なMちゃんにしてやるからな)
(さ、来夢。君はもう、僕から逃げられないよ)
 由樹はつま先にキスをする来夢を見下ろし、宣戦布告をした。
「じっくり、たっぷり、可愛がってあげる」
 そして一気に、ワインを干した。

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