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 食事が終わり、来夢が風呂に入っている時、波留が紫苑に話しかけて来た。
「ねぇ。帰り道で、恋人できた、って言ったよね」
「ああ」
「キスとか、した?」
「した」
「え、いつ?」
「昨夜」
 波留の胸は、とくんと鳴った。
 紫苑は硬派で、簡単にキスなんかしないと思ってたのに。
 わざとらしいほど明るく、続けた。

「じゃあさ。エッチとかも、しちゃったんだ?」
「ああ」
(えーっ!?)
 波留の胸は、どきんと打った。
 頬が、熱く火照って来る。
 そのまま波留は、沈黙してしまった。
「どうした?」
「え、いや。意外だなぁ、なんて」

 来夢の弟の、紫苑。
 彼はいつも、来夢とセットで波留の心の中にいた。
 来夢が波留のものであるように、紫苑も波留のもののような錯覚に陥っていた。
 だが、そんな彼に恋人ができた。
 急に、遠い人になってしまった気分だ。
(何か……ショック)
 テレビから聞こえる、芸人の明るい喋り声が、やけにむなしく響いていた。

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