ベータの俺にできること 【俺はただ、波留を悲しませたくないだけなんだ】

大波小波

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「来夢、今付き合ってるヤツがいるんで。それで」
「二股が、許せない?」
「そうじゃないけど」
 じゃあ、何? と話す由樹の声は穏やかで、大人の余裕が見て取れる。

 敵わないな。
 波留は、この人には敵わない。
 このままいけば、来夢は由樹さんに乗り換える。
(それだけは、避けないと)
 紫苑は、考えると同時に実行していた。

「来夢より、俺はどうですか?」
「ええっ?」
「俺と、付き合いませんか。由樹さん」
「本気?」
「本気」
 ぐい、と紫苑は由樹の方へ近づいた。
 由樹は、逃げない。
 にこにこと微笑み、妖艶なまなざしをくれる。
 紫苑の唇は、由樹のそれと重なった。

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