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『夢』2
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「……う……」
ゆっくりと目を開けるとそこは薄暗い洞窟の様な場所だった。
記憶を辿り寸前に井戸から転落する瞬間を思い出した。
「アシュリー!?どこだ!母さん!」
「…アビ…ゲイル…ここよ」
少し先の闇の中から母さんの声が聞こえた…
腰ほどの水の中を進むと少し横穴になっていた
「アビゲイル」
今度は間近で声が聞こえた…
母は妹を抱えて扉のような場所に縋り付いていた…二人とも想像以上に傷が酷い…早く手当をしないと……ふと母と目が合った…その目が此処を開けるように言っていた…
扉を押し開くと薄暗い横穴の奥にわずかな光が見えた…母の肩を支えながら奥の部屋へと進んだ…
やがて広い空間にたどり着いた…村の中心のちょうど真下あたりだろうか。
「ここは…我々の祖先……探索者『ゲイザー』の遺跡」
「探索者?」
母は痛みを堪えながらこの村の成り立ちを説明してくれた…
遥か黎明期の時代に世界の理を解明せんと旅立った一団がいた…それが探索者の一族「ゲイザー」の一族だった。
彼らは世界の至る所を旅し、新たな発見と魔導の深淵を追い求めた。
その力は強大で多くの者達が求め、そして恐れた。
やがてその叡智は秘匿されこの村の地下に封印された。
ここは山間の遊牧民族の暮らす村として日々を平穏に過ごしていたのだった。
「恐らく…先程の騎士たちは帝国の者達だ…」
「帝国…」
「あの皇帝は最後まで私達の一族の力を求めていたからね…」
辿り着いた先は広いドーム状の部屋だった…見慣れない装置の様なものがいくつもありその中央に大きな台座があった。
母はその傍にアシュリーを寝かせた。
「アビゲイル……聞きなさい…私達は此処までです…後は貴方が『ゲイザー』を継ぐのです」
「?一体何を言って…早く母さん達の治療を…」
「聞きなさい!アビゲイル!」
今まで聞いた事の無い母の大声にアビゲイルは言葉を失った…母はフラつきながらもしっかりとアビゲイルの手を取り握りしめた…
「このままでは我ら『ゲイザー』の全ては帝国に奪われてしまうでしょう…そうなれば世界中の至る所でこの村と同じことが…それ以上の悲劇が起こるでしょう!そうなる前に…貴方が全てを受け継ぐのです!」
そしてその手を台座にある窪みに押し当てた…手が吸い付いたように離れない!!瞬間台座が輝き室内に光が灯り始めた。
「母さん!何だよ!これ!」
「アビゲイル…ごめんなさい…母を許して…さあ…アシュリー母と一緒に行きましょう」
二人はアビゲイルと反対の場所に来ると同じように窪みに手を当てた…
「アシュリーこれからは母と一緒にアビゲイルを導きましょう…アビゲイル…貴方なら大丈夫…この力を上手く使えるわ…自由に生きなさい…復讐なんて考えなくても良いのよ…」
「…お兄ちゃん…大好き…」
「母さん!アシュリー!!」
室内が眩い光に包まれた……膨大な知識と経験が頭に流れ込む……これは…過去の『ゲイザー』達の記憶
彼らの生き様…この世の理…魔導の深淵…その全てがアビゲイルの中に流れ込んできた…
『…チカラガホシイカ?ヤツラヲホロボスチカラヲ!』
「アビゲイル…負けてはだめ」
頭の中で『ゲイザー』が囁く…奴らを皆殺しにしろと…
頭の中で母が囁く…『ゲイザー』に負けるなと…
「力が欲しい!!」
そう叫ぶとこの体は魔素を纏った。
そのまま天井を突き破り地上を飛び越え村の上空に浮かんでいた。
その眼下に広がる光景は地獄そのものだった。
『アああアアあアアアアアアアア!!』
それは『ゲイザー』の叫びなのかアビゲイルの叫びなのかわからない……ただこの体の中で何かが音を立てて壊れるのを感じた…
ゆっくりと目を開けるとそこは薄暗い洞窟の様な場所だった。
記憶を辿り寸前に井戸から転落する瞬間を思い出した。
「アシュリー!?どこだ!母さん!」
「…アビ…ゲイル…ここよ」
少し先の闇の中から母さんの声が聞こえた…
腰ほどの水の中を進むと少し横穴になっていた
「アビゲイル」
今度は間近で声が聞こえた…
母は妹を抱えて扉のような場所に縋り付いていた…二人とも想像以上に傷が酷い…早く手当をしないと……ふと母と目が合った…その目が此処を開けるように言っていた…
扉を押し開くと薄暗い横穴の奥にわずかな光が見えた…母の肩を支えながら奥の部屋へと進んだ…
やがて広い空間にたどり着いた…村の中心のちょうど真下あたりだろうか。
「ここは…我々の祖先……探索者『ゲイザー』の遺跡」
「探索者?」
母は痛みを堪えながらこの村の成り立ちを説明してくれた…
遥か黎明期の時代に世界の理を解明せんと旅立った一団がいた…それが探索者の一族「ゲイザー」の一族だった。
彼らは世界の至る所を旅し、新たな発見と魔導の深淵を追い求めた。
その力は強大で多くの者達が求め、そして恐れた。
やがてその叡智は秘匿されこの村の地下に封印された。
ここは山間の遊牧民族の暮らす村として日々を平穏に過ごしていたのだった。
「恐らく…先程の騎士たちは帝国の者達だ…」
「帝国…」
「あの皇帝は最後まで私達の一族の力を求めていたからね…」
辿り着いた先は広いドーム状の部屋だった…見慣れない装置の様なものがいくつもありその中央に大きな台座があった。
母はその傍にアシュリーを寝かせた。
「アビゲイル……聞きなさい…私達は此処までです…後は貴方が『ゲイザー』を継ぐのです」
「?一体何を言って…早く母さん達の治療を…」
「聞きなさい!アビゲイル!」
今まで聞いた事の無い母の大声にアビゲイルは言葉を失った…母はフラつきながらもしっかりとアビゲイルの手を取り握りしめた…
「このままでは我ら『ゲイザー』の全ては帝国に奪われてしまうでしょう…そうなれば世界中の至る所でこの村と同じことが…それ以上の悲劇が起こるでしょう!そうなる前に…貴方が全てを受け継ぐのです!」
そしてその手を台座にある窪みに押し当てた…手が吸い付いたように離れない!!瞬間台座が輝き室内に光が灯り始めた。
「母さん!何だよ!これ!」
「アビゲイル…ごめんなさい…母を許して…さあ…アシュリー母と一緒に行きましょう」
二人はアビゲイルと反対の場所に来ると同じように窪みに手を当てた…
「アシュリーこれからは母と一緒にアビゲイルを導きましょう…アビゲイル…貴方なら大丈夫…この力を上手く使えるわ…自由に生きなさい…復讐なんて考えなくても良いのよ…」
「…お兄ちゃん…大好き…」
「母さん!アシュリー!!」
室内が眩い光に包まれた……膨大な知識と経験が頭に流れ込む……これは…過去の『ゲイザー』達の記憶
彼らの生き様…この世の理…魔導の深淵…その全てがアビゲイルの中に流れ込んできた…
『…チカラガホシイカ?ヤツラヲホロボスチカラヲ!』
「アビゲイル…負けてはだめ」
頭の中で『ゲイザー』が囁く…奴らを皆殺しにしろと…
頭の中で母が囁く…『ゲイザー』に負けるなと…
「力が欲しい!!」
そう叫ぶとこの体は魔素を纏った。
そのまま天井を突き破り地上を飛び越え村の上空に浮かんでいた。
その眼下に広がる光景は地獄そのものだった。
『アああアアあアアアアアアアア!!』
それは『ゲイザー』の叫びなのかアビゲイルの叫びなのかわからない……ただこの体の中で何かが音を立てて壊れるのを感じた…
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