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10章 巻き込まれた兄の話
後は野となれ山となれ
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一人きりの出撃準備室。
ミーティング用の地図やホワイトボード、試し打ち用の射撃場、雑談に使用してくださいと置いてある小テーブル、宇宙人が攻めてくる設定が古めかしいドット絵で表現された太古のゲーム機。どれらも誰かと暇を潰すために用意されたもの。それら今、ただ鎮座するだけの置物となっている。
春先はここに妹と桜庭がいて、必死こいて大会のルール決めと視聴者対応をしていた。俺はその横でシオミンが大会に参加すると知り、どういう能力にするべきか考えていた。
春先からこのゲームも何度か大型アップデートを重ねた。本来一つだけしか使えない能力であったが、二つの能力が併用可能になった。正確にはそういうゲームモードが追加されたわけだが、ケイオスはそれを指定してきた。
俺が選んだ能力の一つのうち、一つは使い慣れた盾を生成する能力にした。心の力を直に発揮して守る方法もあるが、コントロールに不安を覚える状況では衝撃を直に受けない方法の方が望ましいという理由もある。
もう一つの能力は同じく見知った能力を選んだ。
ただ本当にこれでいいのかという不安はあった。
能力の強い弱いではない。
俺が思い描いた使い方ができるのかという根拠がないのだ。
ゆえに基本的には盾を中心とした戦いになる。
最期の一撃、そこにどう至れるか。
そういう戦いになる。
だが頭の中でシミュレートしたがどう考えてもそこに至る戦いの組み方ができない。
どこかでケイオスに殺される。
俺の戦い方は極論どこまでいっても一撃必殺でしかない。それなりに戦えるようになったとはいえ、耐えて耐えて当てるだけ。わかっていれば対抗する術などいくらでもある。そういう類のものなのだ。
加えてケイオスがどこまで変貌しているのかもわからない。確実にブルースフィアの雪山で戦った時よりも、討伐作戦で対峙した時よりも、ライブを襲撃した時よりも、強くなっているはずだ。
漫画やアニメでお約束の勝率ゼロパーというところだろう。そうならば主人公の不思議な力でゼロパーを回避したり、友情パワーで覆したりが定番だろう。だが影は喜び勇んで俺を苦しめようとするし、桜庭に友情パワーなんて薄ら寒いものを感じるようなことはない。
そんなボッチマンな俺にも一つ手段がある。
開闢の鬼道だ。
自分がどうなろうと構わない。
そう思えば影を、力を全力で解放できる。
それでようやく戦いになる。
自らの命を犠牲にしたうえで勝利を得る。
どうあがいても詰んだ戦い。
おそらく邪馬台国の先輩も同じ状況だったのだろう。祖国を滅亡してでも力を解放しなければならなかった事態が起きていたのだろう。ならば先輩に倣い、あとは野となれ山となれ。誰かが上手いこと後始末してくれるはずだ。
最期にシオミンの映像を見てから死ぬか、と現実逃避するためにコンソールウィンドウを開く。
開けた。
開けてしまった。
それは自らのアカウントを使用して、外部との接続が取れる状況であることを示していた。
それを理解させるが如く、大量のメッセージと着信履歴の通知が押し寄せてきた。
ミーティング用の地図やホワイトボード、試し打ち用の射撃場、雑談に使用してくださいと置いてある小テーブル、宇宙人が攻めてくる設定が古めかしいドット絵で表現された太古のゲーム機。どれらも誰かと暇を潰すために用意されたもの。それら今、ただ鎮座するだけの置物となっている。
春先はここに妹と桜庭がいて、必死こいて大会のルール決めと視聴者対応をしていた。俺はその横でシオミンが大会に参加すると知り、どういう能力にするべきか考えていた。
春先からこのゲームも何度か大型アップデートを重ねた。本来一つだけしか使えない能力であったが、二つの能力が併用可能になった。正確にはそういうゲームモードが追加されたわけだが、ケイオスはそれを指定してきた。
俺が選んだ能力の一つのうち、一つは使い慣れた盾を生成する能力にした。心の力を直に発揮して守る方法もあるが、コントロールに不安を覚える状況では衝撃を直に受けない方法の方が望ましいという理由もある。
もう一つの能力は同じく見知った能力を選んだ。
ただ本当にこれでいいのかという不安はあった。
能力の強い弱いではない。
俺が思い描いた使い方ができるのかという根拠がないのだ。
ゆえに基本的には盾を中心とした戦いになる。
最期の一撃、そこにどう至れるか。
そういう戦いになる。
だが頭の中でシミュレートしたがどう考えてもそこに至る戦いの組み方ができない。
どこかでケイオスに殺される。
俺の戦い方は極論どこまでいっても一撃必殺でしかない。それなりに戦えるようになったとはいえ、耐えて耐えて当てるだけ。わかっていれば対抗する術などいくらでもある。そういう類のものなのだ。
加えてケイオスがどこまで変貌しているのかもわからない。確実にブルースフィアの雪山で戦った時よりも、討伐作戦で対峙した時よりも、ライブを襲撃した時よりも、強くなっているはずだ。
漫画やアニメでお約束の勝率ゼロパーというところだろう。そうならば主人公の不思議な力でゼロパーを回避したり、友情パワーで覆したりが定番だろう。だが影は喜び勇んで俺を苦しめようとするし、桜庭に友情パワーなんて薄ら寒いものを感じるようなことはない。
そんなボッチマンな俺にも一つ手段がある。
開闢の鬼道だ。
自分がどうなろうと構わない。
そう思えば影を、力を全力で解放できる。
それでようやく戦いになる。
自らの命を犠牲にしたうえで勝利を得る。
どうあがいても詰んだ戦い。
おそらく邪馬台国の先輩も同じ状況だったのだろう。祖国を滅亡してでも力を解放しなければならなかった事態が起きていたのだろう。ならば先輩に倣い、あとは野となれ山となれ。誰かが上手いこと後始末してくれるはずだ。
最期にシオミンの映像を見てから死ぬか、と現実逃避するためにコンソールウィンドウを開く。
開けた。
開けてしまった。
それは自らのアカウントを使用して、外部との接続が取れる状況であることを示していた。
それを理解させるが如く、大量のメッセージと着信履歴の通知が押し寄せてきた。
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