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9章 半年間の間にあったこと
汐見の場合
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二ヶ月。
あの騒動から二ヶ月が経った。
世界的に見ればまだまだ混乱の極みだけど、汐見の周りは落ち着きを取り戻しつつあった。おかげで久しぶりに趣味として始めたブルースフィアにログインできている。
アバターは男が寄り付かない気の強そうな海外セレブをモチーフとしたものを使っているため、普段では考えられないほど視線を感じない。高そうな見た目であるため視線はそれなりに集めはするけど、声までは掛けられないので気楽なものだ。ファン一号にはそのせいでブランド女と心の中で呼ばれていたと知った時は解せなかったが。
「一緒に遊ぶの久しぶりだねぇ」
傍らでニコニコしているのは更科だ。タヌキの妖怪の癖に狐モチーフのアバターを使っている。以前、何故キツネなのかを訊いてみたら、キツネは男女問わず美形なのに対し、タヌキは三枚目か股間に巨大なイチモツを抱えてるのばっからしくて女性は選べないと可愛らしくプンスカしていた。ちなみにビッグデータ的にはイチモツアバターを購入しているのは女性の方が多いと出ている。
「僕までお邪魔しちゃって大丈夫でしたか?」
その後方で所在なさげに視線をうろちょろさせるのはこの事件で知り合った北御門という退魔師さんだ。更科は私よりも昔に知り合っていたらしいが。なんでも更科が過去やらかした時に逮捕したのがこの退魔師さんで、事情聴取した際に意気投合したとか「おいおい」と突っ込みたくなるユルユルボーイだ。彼はゲーム側が用意している量産型の美丈夫アバターを使用していた。
何故この三人でゲームをすることになったのかといえば不思議な縁としか言いようがない。
本当はお兄さんと一緒にゲームしようと思っていたのだ。ここ最近……というよりずっと思い詰めたように修行に明け暮れている。それはもう鬼気迫るほど。まだまだ先が長い状態でのそれは続かない。
長期間の計画を立てる上で大事なのは今日サボっても明日また頑張ろうの精神だ。
AIが何言っているのだろうと自分でも思うし、お前努力したことないだろうと言われればそれまでだけど、色んなデータを集めた汐見だからこそ言えることがある。休まず限界まで努力できるのは短期間だけ。よくて数週間。数か月、数年単位の努力はもっと気を緩く持たないとできない。
ゲームのデイリー報酬だってログインボーナスだけを毎日ずっと貰い続けるのは存外大変なのだから。泰然と構えるぐらいがちょうどいいのだ。
だからお兄さんと午後からブルースフィアで遊ぼうと誘ってみたのだけど、午後は用事が入って無理だと断られてしまった。なんでも里にいる看板娘な雪女に以前迷惑をかけた賠償として買い物を手伝えと強要されているらしい。
正直思った。
まーた女ひっかけてる、って。
本人にその気はないのがまたタチが悪い。
というか汐見を前に、他の女の話をするのがおかしい。
大昔に粗製乱造された鈍感系主人公じゃあるまいし、どうしてこう人の好意に気付けないのだろう。
てか汐見のファンなら汐見だけを見ていて欲しい。
そんなモヤモヤを抱えていたらそのやり取りを見ていた更科が「暇なら久しぶりに遊ぼぉ」と乗っかってきた。そんでブルースフィアに三人用ミニゲームが追加されたと知ると、仲が良いらしい退魔師さんを連れてきた。
これは逆に汐見がお邪魔なのでは、と違うモヤモヤを抱えたのは言うまでもない。
結局、三人で一通り遊んで今はブルースフィア内の見晴らしのいい丘の上で休憩していた。
「久しぶりにゲームなんてしたよ」
そう言って顔を綻ばせるのは退魔師さん。
「退魔師さんは普段はゲームしないの?」
「この手のゲームはあんまりかな。普段は携帯端末でパズルゲームとかなら」
「ふうん。それっぽい」
「ゲームやらなさそうに見える?」
「アウトドア派に見えるから」
「アニメとかなら見るんだけどね。更科さんともそれで話が合ったし」
事情聴取の場でアニメの話で盛り上がって怒られたらしい。
「それにしても次みんなで遊べるのいつになるんだろうね」
退魔師さんは不意にそんなことを口にした。社会全体が緩やかに機能不全に陥り始めているのだからその不安は間違っていない。実質、全世界がテロリストに狙われている状況といえる。
「少人数で集まることならできるけどあたしを含めたヒマワリ三人にお兄さんも加わるとなると全てが解決した後の話かな」
「やっぱりそうなるよね」
「ところで更科に訊きたかったことがあるの」
本体とは比べ物にならない流麗な風体がニンマリと人懐っこい笑顔を作る。
「なんですかぁ?」
「汐見がマイマイの巫女になったって話でしょ。汐見みたいな人工の存在がそういうのになれるものなの?」
答えてしんぜよう、と立ち上がり、胸を張る。
頭の悪い美人にしか見えない更科が言うには、心さえあればなんでもいいらしい。だから人工知能が巫女になってもおかしくないし、犬とか猫とか蛇とか亀とかがそういうものを担っていた神様もいた。流石にそれらは巫女とは呼ばず、神使というらしい。
「巫女になったAIなんて世界初だよぉ。巫女になってからなにか変わったこととかあったら教えてねぇ」
マイマイと繋がった時、おそらく巫女として初めて力に触れた時、感じたことがあった。色んなデータを探してもピッタリそれを言い表す言葉は見つからない。ファジーさを許容するのであれば世界が広がる感覚を覚えた。
うん、何を言っているのかわからない。
「よくわからない感覚はあったかな。もしかしたらあのケイオスと一緒かもね。アレも自分の力に振り回されてたみたいだし」
「あ、ケイオスで思い出したんだけどぉ、あのゼロイチで出来た身体何処かで見覚えあったなぁ。あ、そうだぁ。以前お仕事で対応した暴走車事件で対応した時に見たんだぁ!」
ギョッとした。
世界が欲する情報をこんなどうでもいいところで思い出すなんて。退魔師さんも退魔師さんで「あんなゼロイチの羅列でよく見分けがつくなぁ」なんて関心していないで。
「更科。それってどの程度事件に関係ありそう?」
極めて冷静に努めて尋ねる。
まさかAIたる私が自覚的に冷静に努めなければいけない日がくるとは思わなかった。
「ふふん、たぶんあんな特徴的な羅列は滅多にないからきっと根っ子の部分は一緒に違いないよぉ!」
うん、ここにお兄さんがいなくて良かったと思った。お兄さんの心痛を減らすことができたのだから。
「二人とも。レクリエーションの時間はここまで。残念ながらお仕事の時間がきてしまったようね」
とりあえず西野さんに連絡してみよう。先日、邪馬台国がどうこうで苦労していた彼女に連絡を入れるのは気が引けるが、この事件が解決したらきっと国は貴女に報いてくれるはず。多分きっとおそらくメイビー。
あの騒動から二ヶ月が経った。
世界的に見ればまだまだ混乱の極みだけど、汐見の周りは落ち着きを取り戻しつつあった。おかげで久しぶりに趣味として始めたブルースフィアにログインできている。
アバターは男が寄り付かない気の強そうな海外セレブをモチーフとしたものを使っているため、普段では考えられないほど視線を感じない。高そうな見た目であるため視線はそれなりに集めはするけど、声までは掛けられないので気楽なものだ。ファン一号にはそのせいでブランド女と心の中で呼ばれていたと知った時は解せなかったが。
「一緒に遊ぶの久しぶりだねぇ」
傍らでニコニコしているのは更科だ。タヌキの妖怪の癖に狐モチーフのアバターを使っている。以前、何故キツネなのかを訊いてみたら、キツネは男女問わず美形なのに対し、タヌキは三枚目か股間に巨大なイチモツを抱えてるのばっからしくて女性は選べないと可愛らしくプンスカしていた。ちなみにビッグデータ的にはイチモツアバターを購入しているのは女性の方が多いと出ている。
「僕までお邪魔しちゃって大丈夫でしたか?」
その後方で所在なさげに視線をうろちょろさせるのはこの事件で知り合った北御門という退魔師さんだ。更科は私よりも昔に知り合っていたらしいが。なんでも更科が過去やらかした時に逮捕したのがこの退魔師さんで、事情聴取した際に意気投合したとか「おいおい」と突っ込みたくなるユルユルボーイだ。彼はゲーム側が用意している量産型の美丈夫アバターを使用していた。
何故この三人でゲームをすることになったのかといえば不思議な縁としか言いようがない。
本当はお兄さんと一緒にゲームしようと思っていたのだ。ここ最近……というよりずっと思い詰めたように修行に明け暮れている。それはもう鬼気迫るほど。まだまだ先が長い状態でのそれは続かない。
長期間の計画を立てる上で大事なのは今日サボっても明日また頑張ろうの精神だ。
AIが何言っているのだろうと自分でも思うし、お前努力したことないだろうと言われればそれまでだけど、色んなデータを集めた汐見だからこそ言えることがある。休まず限界まで努力できるのは短期間だけ。よくて数週間。数か月、数年単位の努力はもっと気を緩く持たないとできない。
ゲームのデイリー報酬だってログインボーナスだけを毎日ずっと貰い続けるのは存外大変なのだから。泰然と構えるぐらいがちょうどいいのだ。
だからお兄さんと午後からブルースフィアで遊ぼうと誘ってみたのだけど、午後は用事が入って無理だと断られてしまった。なんでも里にいる看板娘な雪女に以前迷惑をかけた賠償として買い物を手伝えと強要されているらしい。
正直思った。
まーた女ひっかけてる、って。
本人にその気はないのがまたタチが悪い。
というか汐見を前に、他の女の話をするのがおかしい。
大昔に粗製乱造された鈍感系主人公じゃあるまいし、どうしてこう人の好意に気付けないのだろう。
てか汐見のファンなら汐見だけを見ていて欲しい。
そんなモヤモヤを抱えていたらそのやり取りを見ていた更科が「暇なら久しぶりに遊ぼぉ」と乗っかってきた。そんでブルースフィアに三人用ミニゲームが追加されたと知ると、仲が良いらしい退魔師さんを連れてきた。
これは逆に汐見がお邪魔なのでは、と違うモヤモヤを抱えたのは言うまでもない。
結局、三人で一通り遊んで今はブルースフィア内の見晴らしのいい丘の上で休憩していた。
「久しぶりにゲームなんてしたよ」
そう言って顔を綻ばせるのは退魔師さん。
「退魔師さんは普段はゲームしないの?」
「この手のゲームはあんまりかな。普段は携帯端末でパズルゲームとかなら」
「ふうん。それっぽい」
「ゲームやらなさそうに見える?」
「アウトドア派に見えるから」
「アニメとかなら見るんだけどね。更科さんともそれで話が合ったし」
事情聴取の場でアニメの話で盛り上がって怒られたらしい。
「それにしても次みんなで遊べるのいつになるんだろうね」
退魔師さんは不意にそんなことを口にした。社会全体が緩やかに機能不全に陥り始めているのだからその不安は間違っていない。実質、全世界がテロリストに狙われている状況といえる。
「少人数で集まることならできるけどあたしを含めたヒマワリ三人にお兄さんも加わるとなると全てが解決した後の話かな」
「やっぱりそうなるよね」
「ところで更科に訊きたかったことがあるの」
本体とは比べ物にならない流麗な風体がニンマリと人懐っこい笑顔を作る。
「なんですかぁ?」
「汐見がマイマイの巫女になったって話でしょ。汐見みたいな人工の存在がそういうのになれるものなの?」
答えてしんぜよう、と立ち上がり、胸を張る。
頭の悪い美人にしか見えない更科が言うには、心さえあればなんでもいいらしい。だから人工知能が巫女になってもおかしくないし、犬とか猫とか蛇とか亀とかがそういうものを担っていた神様もいた。流石にそれらは巫女とは呼ばず、神使というらしい。
「巫女になったAIなんて世界初だよぉ。巫女になってからなにか変わったこととかあったら教えてねぇ」
マイマイと繋がった時、おそらく巫女として初めて力に触れた時、感じたことがあった。色んなデータを探してもピッタリそれを言い表す言葉は見つからない。ファジーさを許容するのであれば世界が広がる感覚を覚えた。
うん、何を言っているのかわからない。
「よくわからない感覚はあったかな。もしかしたらあのケイオスと一緒かもね。アレも自分の力に振り回されてたみたいだし」
「あ、ケイオスで思い出したんだけどぉ、あのゼロイチで出来た身体何処かで見覚えあったなぁ。あ、そうだぁ。以前お仕事で対応した暴走車事件で対応した時に見たんだぁ!」
ギョッとした。
世界が欲する情報をこんなどうでもいいところで思い出すなんて。退魔師さんも退魔師さんで「あんなゼロイチの羅列でよく見分けがつくなぁ」なんて関心していないで。
「更科。それってどの程度事件に関係ありそう?」
極めて冷静に努めて尋ねる。
まさかAIたる私が自覚的に冷静に努めなければいけない日がくるとは思わなかった。
「ふふん、たぶんあんな特徴的な羅列は滅多にないからきっと根っ子の部分は一緒に違いないよぉ!」
うん、ここにお兄さんがいなくて良かったと思った。お兄さんの心痛を減らすことができたのだから。
「二人とも。レクリエーションの時間はここまで。残念ながらお仕事の時間がきてしまったようね」
とりあえず西野さんに連絡してみよう。先日、邪馬台国がどうこうで苦労していた彼女に連絡を入れるのは気が引けるが、この事件が解決したらきっと国は貴女に報いてくれるはず。多分きっとおそらくメイビー。
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