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8章 神と巫女
だからこそ人を惹きつける
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「……僕がお前に劣るだと」
ケイオスは構え直す。
「そんなことが許されるわけがないだろっ!」
障壁に向かって何度も剣を打ち付ける。その度に甲高い音と弾ける火花が衝突部位から発生した。
何度も何度も打ち付ける。
最初は強気であった妹の顔が陰りを見せる。
障壁に亀裂が入った。
ケイオスは大きく剣を振りかぶる。
「なぁんだ。僕でもちゃんと壊せるじゃないか」
もう一度叩き付ける。
一つ一つを大きく、強く振り抜く。
その度に亀裂は大きく、深く、広がっていく。
「皆の声を聞かせて!」
妹が叫んだ。
苦悶に表情を歪ませながら。
声色に弱さを含ませて。
だから観客の反応は薄い。押してる時は調子良いが、押し返されてら鈍くなるのが人である。スポーツでもなんでも。勝ち馬に乗る。損をしたくない。そんな気持ちが先に立つ。乗る馬は強制され、賽も投げられた状況だというのに。
「みんな! マイマイを応援して!」
汐見が両手でマイクを持って声を張り上げた。
「何が起こってるのかわからないと思うけどマイマイを応援して! それがマイマイの力になるから!」
声が少し上がった。
まだ足りない。
「豚ども! 女が戦ってるのにお前らは無様に餌が与えられるのを待つだけじゃないでしょうね!? ご褒美が欲しいのなら声を上げなさい! 豚の気概を見せなさい!」
声が大きくなる。
亀裂が止まった
妹は不敵に笑った。その身体はほのかな光を纏っていた。その光は汐見とカレンさん、二人から届けられたように見えた。
光を全身に纏った妹は地面に足裏を大きく叩きつけた。
「――つべこべ言わずに私に全てを賭けなさい!」
会場は光に包まれた。
目を焼くかと錯覚するほどの光量。
瞼を閉じると次に感じたのは暖かさだった。いや、それを通り越した肌を焼くかと思わせる熱気。
苛烈な煌めき。
十数秒ほどでその煌めきは落ち着き、瞼を開く。
妹のナニカが変わっていた。
姿形はお手製のガワから変わっていない。
ケイオスを前にした立ち振る舞いも、細かな所作は妹の癖が見受けられた。
何も変わっていない。なのに変わったと理解できた。
妹は腕を目の前で払う。
その手から光が溢れ、亀裂をなかったものにしていく。
妹は自分の手を見つめ、それからゆったりとした動作で一本の指を掲げる。
その動作は会場にいる全ての人の視線を奪った。
「私が神だ」
妹が人ならざるものの階段をまた一歩進んだ。
なのに頭の出来だけは不変であった。
ケイオスは構え直す。
「そんなことが許されるわけがないだろっ!」
障壁に向かって何度も剣を打ち付ける。その度に甲高い音と弾ける火花が衝突部位から発生した。
何度も何度も打ち付ける。
最初は強気であった妹の顔が陰りを見せる。
障壁に亀裂が入った。
ケイオスは大きく剣を振りかぶる。
「なぁんだ。僕でもちゃんと壊せるじゃないか」
もう一度叩き付ける。
一つ一つを大きく、強く振り抜く。
その度に亀裂は大きく、深く、広がっていく。
「皆の声を聞かせて!」
妹が叫んだ。
苦悶に表情を歪ませながら。
声色に弱さを含ませて。
だから観客の反応は薄い。押してる時は調子良いが、押し返されてら鈍くなるのが人である。スポーツでもなんでも。勝ち馬に乗る。損をしたくない。そんな気持ちが先に立つ。乗る馬は強制され、賽も投げられた状況だというのに。
「みんな! マイマイを応援して!」
汐見が両手でマイクを持って声を張り上げた。
「何が起こってるのかわからないと思うけどマイマイを応援して! それがマイマイの力になるから!」
声が少し上がった。
まだ足りない。
「豚ども! 女が戦ってるのにお前らは無様に餌が与えられるのを待つだけじゃないでしょうね!? ご褒美が欲しいのなら声を上げなさい! 豚の気概を見せなさい!」
声が大きくなる。
亀裂が止まった
妹は不敵に笑った。その身体はほのかな光を纏っていた。その光は汐見とカレンさん、二人から届けられたように見えた。
光を全身に纏った妹は地面に足裏を大きく叩きつけた。
「――つべこべ言わずに私に全てを賭けなさい!」
会場は光に包まれた。
目を焼くかと錯覚するほどの光量。
瞼を閉じると次に感じたのは暖かさだった。いや、それを通り越した肌を焼くかと思わせる熱気。
苛烈な煌めき。
十数秒ほどでその煌めきは落ち着き、瞼を開く。
妹のナニカが変わっていた。
姿形はお手製のガワから変わっていない。
ケイオスを前にした立ち振る舞いも、細かな所作は妹の癖が見受けられた。
何も変わっていない。なのに変わったと理解できた。
妹は腕を目の前で払う。
その手から光が溢れ、亀裂をなかったものにしていく。
妹は自分の手を見つめ、それからゆったりとした動作で一本の指を掲げる。
その動作は会場にいる全ての人の視線を奪った。
「私が神だ」
妹が人ならざるものの階段をまた一歩進んだ。
なのに頭の出来だけは不変であった。
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