妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗

文字の大きさ
上 下
185 / 229
8章 神と巫女

演者が揃う

しおりを挟む
 スモークが張られ、レーザーが入り乱れる。階段状の観客席では各自が推したいメンバーのペンライトが音楽に合わせて振られる。それが万単位ともなれば壮観であった。観客の視線はスポットライトに照らされたステージ、アイドルを抜いたビデオスクリーンに注がれていた。

 そこにはアイドルである三人の姿があった。汐見柚子、マイカ、シスターもとい元ヤンカレン。彼女らの歌声や手足の動きには一体感があった。やはり表現力においては汐見が何段か上澄みにいるものの、マイカもカレンの出来栄えも悪くはない。成長物語を与えられたり、アイドルとしての可愛げだったり、そういう芸術を取っ払った評価点は高い。

 それにマイカとカレンさんの強みはそこではなかった。

 それはトーク力にある。

 歌と歌の合間にあるトークコーナー。

 汐見が会話の回し役を担い、マイカとカレンさんがそれに合わせる。マイカが縦横無尽にボケとツッコミを担当し、シスターで元ヤンというキャラクター性を持つカレンさんが合いの手的にオチを引き受ける。客が盛り上がっているゆえ、汐見も安心して回しに専念ができていた。

 それは舞台準備が必要な状況でも活きた。

 汐見がサビを担当する楽曲があり、それまでのメロディー部分をマイカとカレンさんが歌うことになっていた。サビまでは汐見はステージ裏に隠れていて、サビに差し掛かったら派手に登場するという演出だ。

 ゆえに歌が開始するまでにステージ上からハケなければならない。

 この手のアイドルユニットでは中心となる人物がいなくなると盛り下がることが往々にしてある。理由はファンのほとんどがその人の推しだったり、話術が圧倒的だったりなど様々だ。

 話題の流れからステージから去る演出を見せる形で汐見ははけて、二人残される。

 次の楽曲の準備が始まるまで二人で間を持たせなければならない。

 二人はやってのけた。

 マイカが女王様ネタを持ち出し、さらに観客を煽る。豚と呼ばれたいファンはそれにまんまと乗っかり、求められればやってしまうサービス精神旺盛なカレンさんが求めれたことを百パーセントの出来でこなす。予想通りでわかり切った展開。だがそれがお約束ある。意外性なんて必要ない。ファンと長年かけて築き上げていくものをこの一か月の間に作り上げていた。

 楽曲の後もライブは大過なく進んでいく。

 途中機材トラブルで曲が途切れたりしたが、マイカが突然シャウトしてまるでそういう演出だったのだと思わせて一層盛り上がった。

 こうして迎えたライブのエンディング。

 ここまで来たらケイオスは現れないそういう空気が現場に流れていた。

 一種の安堵であったように思える。

 観客席頭上の空間に亀裂が入る。

 前回の作戦で放送されていたエネミーが現れる前兆。ニュースで繰り返し流され、日本国民どころか世界中で知らない人はいない現象。

 盛り上がったていた会場は、一瞬の静寂ののち、阿鼻叫喚の地獄に変貌した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり
ファンタジー
書籍化決定しました! 刊行は3月中旬頃です。 ☆第17回ファンタジー小説大賞で【癒し系ほっこり賞】を受賞☆ (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です) ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様でも公開しております。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...