169 / 229
8章 神と巫女
神も仏も
しおりを挟む
工藤さんのシスター化に伴う話し合い、邪馬台国の謎に迫る話し合い、ケイオスとの交渉、ケイオス対策について話し合い。
今日一日話し合いしかしていない。数か月前には誰とも話さない日も珍しくなかったのに、著しい変化である。この変化を陽の者はきっとポジティブに捉えるだろう。「社会復帰したんだね」とでも言うやもしれん。だが待って欲しい。これは本当に社会復帰だといえるのだろうか。ただ単に上手いこと面倒ごとを押し付けられているだけなのではなかろうか。コミュニケーション能力に著しい障害が認められてしまい、事情もあって断れないから足元を見られているのかもしれない。
こういう時は誰かに元気づけて欲しいのが人情であるが、我が女神であるシオミンは妹様の相手で忙しく、ならばシスターに愚痴でもこぼそうかと考えるがそれも妹様に取られてしまっている。もっとも工藤さんに元気づけて欲しいなんていえる仲ではない。だが桜庭への嫌がらせとして考えるならば上等なので機会さえあれば一念発起してでもやってやりたい。
とにかく疲れた。
頭も心も疲れ切った。
ぼーっとしたい。
もう誰とも話さないで部屋に引きこもりたい。
声を一度も発しないまま一日を終えたい。
ああ、癒されたい。
この世には神も仏もいないのか。
いや、いるのだが。それは俺が望んだ神様ではない。関西弁で喋り倒す神様を相手にしては心が落ち着かないし、我が女神であるシオミンは多忙。これから神様になろうっていうのが妹なのは本当に世も末だと思う。
ああ、どこかに俺を癒してくれる人はいないものか。
そんなことを考えてみたものの、そんな女性がいたら俺はその女性を拒絶すると思う。俺は俺の駄目なところを全て知っている。ゆえに俺を癒したいとかいう趣味の悪さに鳥肌が立つ。もし趣味がまともだと主張されるのであれば、金目当てか弱みを握りたいだけなのだろう。
そう思って、自分は変わったなと感じてしまう。
昔ならば、それこそ数か月前ならば「金も弱みも何もないぜ! ちくしょう!」と涙声で強がることもできた。今それを言えないということは、内心そういう立場でなくなったことを受け入れているのだろう。もうバイトをサボりまくる先輩アルバイターを桜庭と協力して、あの手この手で追い詰められるなんて馬鹿はもうできないのだろう。
俺も大人になってしまったものだ。
疲れ切った心では酒に逃げ込む元気も、女に走る余力すら残っておらずとにかく寝ようと思い、ベッドに横になる。汗も流さず寝入る。朝起きた時、最悪な気分だろうなぁと思いつつ、それもどうでもいいやと泥に沈む覚悟をする。
意識の半分ほど泥に沈んだ時であった。
ベッドの脇に置いた携帯からの通知音で意識を泥から引きずり出される。
腹立たしさを押し殺し、画面を見ると工藤さんからのメッセージであった。
「マイカさんが大変なことになっているので助けてください」
神も仏も殺してやろうかこんにゃろう。
今日一日話し合いしかしていない。数か月前には誰とも話さない日も珍しくなかったのに、著しい変化である。この変化を陽の者はきっとポジティブに捉えるだろう。「社会復帰したんだね」とでも言うやもしれん。だが待って欲しい。これは本当に社会復帰だといえるのだろうか。ただ単に上手いこと面倒ごとを押し付けられているだけなのではなかろうか。コミュニケーション能力に著しい障害が認められてしまい、事情もあって断れないから足元を見られているのかもしれない。
こういう時は誰かに元気づけて欲しいのが人情であるが、我が女神であるシオミンは妹様の相手で忙しく、ならばシスターに愚痴でもこぼそうかと考えるがそれも妹様に取られてしまっている。もっとも工藤さんに元気づけて欲しいなんていえる仲ではない。だが桜庭への嫌がらせとして考えるならば上等なので機会さえあれば一念発起してでもやってやりたい。
とにかく疲れた。
頭も心も疲れ切った。
ぼーっとしたい。
もう誰とも話さないで部屋に引きこもりたい。
声を一度も発しないまま一日を終えたい。
ああ、癒されたい。
この世には神も仏もいないのか。
いや、いるのだが。それは俺が望んだ神様ではない。関西弁で喋り倒す神様を相手にしては心が落ち着かないし、我が女神であるシオミンは多忙。これから神様になろうっていうのが妹なのは本当に世も末だと思う。
ああ、どこかに俺を癒してくれる人はいないものか。
そんなことを考えてみたものの、そんな女性がいたら俺はその女性を拒絶すると思う。俺は俺の駄目なところを全て知っている。ゆえに俺を癒したいとかいう趣味の悪さに鳥肌が立つ。もし趣味がまともだと主張されるのであれば、金目当てか弱みを握りたいだけなのだろう。
そう思って、自分は変わったなと感じてしまう。
昔ならば、それこそ数か月前ならば「金も弱みも何もないぜ! ちくしょう!」と涙声で強がることもできた。今それを言えないということは、内心そういう立場でなくなったことを受け入れているのだろう。もうバイトをサボりまくる先輩アルバイターを桜庭と協力して、あの手この手で追い詰められるなんて馬鹿はもうできないのだろう。
俺も大人になってしまったものだ。
疲れ切った心では酒に逃げ込む元気も、女に走る余力すら残っておらずとにかく寝ようと思い、ベッドに横になる。汗も流さず寝入る。朝起きた時、最悪な気分だろうなぁと思いつつ、それもどうでもいいやと泥に沈む覚悟をする。
意識の半分ほど泥に沈んだ時であった。
ベッドの脇に置いた携帯からの通知音で意識を泥から引きずり出される。
腹立たしさを押し殺し、画面を見ると工藤さんからのメッセージであった。
「マイカさんが大変なことになっているので助けてください」
神も仏も殺してやろうかこんにゃろう。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説


スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中

高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。
マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。
空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。
しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。
すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。
緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。
小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

転生令嬢シルクの奮闘記〜ローゼ・ルディ学園の非日常〜
桜ゆらぎ
ファンタジー
西の大国アルヴァティアの子爵令嬢、シルク・スノウパール。
彼女は十六歳になる年の春、熱で倒れ三日間寝込んだ末に、全てを思い出した。
前世の自分は、日本生まれ日本育ちの女子高生である。そして今世の自分は、前世で遊び倒していた乙女ゲームの序盤に登場したきり出てこない脇役キャラクターである。
そんなバカな話があるかと頬をつねるも、痛みで夢ではないことを突きつけられるだけ。大人しく現実を受け入れて、ひとまず脇役としての役目を果たそうと、シルクは原作通りに動き出す。
しかし、ヒロインが自分と同じく転生者であるというまさかの事態が判明。
“王太子と幼なじみを同時に攻略する”という野望を持つヒロインの立ち回りによって、この世界は何もかも原作から外れていく。
平和な学園生活を送るというシルクの望みは、入学初日にしてあえなく打ち砕かれることとなった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる