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8章 神と巫女
健康的な生活を送りましょうという医者と同じ
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あとで西野さんに資料の引き渡しと釈明することにして「資料引き渡す前に影の件について話しましょうか」と話を変えた。
樹神さんは「せやな」と同意を示し、床に広げた資料の中から真ん中ぐらいに置いてあるものを拾い上げる。その途中、貴重だと思われる資料を踏んだり、下躓いたりしていた。北御門はその度、青い顔をする。監督責任というやつが北御門にはあるのだろう。神様を監督するのはこれいかに。外部監査みたいなものだろうか。一蓮托生らしいからお前も一緒に怒られよう。そうしよう。
樹神さんが資料に目を通す。
「ええと、ふむふむ」
そう言ってから首を傾げる。
「邪馬台国の女王って何人かおるん?」
それに答えたのは北御門。
「二代目まではいたとわかっていますがそれが何か?」
「ああ、いやな、ウチてっきり邪馬台国の女王って一人だけやと思ってたから有名な卑弥呼が影に苦しんでたと思うてたんやけど、そうやなかったみたい。一応卑弥呼自身も開闢の鬼道の使い手ではあったらしいんやけどか影とは無縁やったって」
「では苦しんでたのは二代目の方でしょうか?」
「そーいうことになるな」
「二代目というと、たしか邪馬台国を滅ぼしたと言われる方ですね。その方が影に悩まされていたと?」
「そう書いてあるわ。トヨちゃん……って読むんかなこれ。まートヨちゃんは能力の高さからウチの師匠のお眼鏡にも適って卑弥呼の後釜になったそうやけど、初代の壁が高すぎたそうや。卑弥呼に従っておけばなんにも問題ない時代から、たまにポカをしては責められる日々にストレスが溜まって、トヨちゃんの力が暴走して邪馬台国滅亡ってこと書いてあるわ」
黙ってしまった北御門に代わり俺が手を挙げる。
「……それ、邪馬台国滅亡の謎も解けてしまったのでは」
ハッとした表情をされた。
「もうこれは逆に歴史的な資料を大事に保管しとったウチを褒めてくれてもええんちゃうかな」
俺は再び貴重だと思われる資料を踏んだり下躓いて戻ってきた樹神さんが荒らした資料を整える。
「開き直るかどうかは一旦置いといて、影が暴走する術について何か記載なかったですか?」
「ああ、うん。これ自体は当時の様子を描いたもんやけど、今更であるが我は今こう思う~的な感じで、開闢の鬼道の発現方法の見直しと制御方法の鍛錬の仕方、たまに後悔の念が綴られてたわ」
樹神さんがその後続けてそれぞれ教えてくれた。
発現方法の見直しとは、魂の外郭に小さな孔を空けることをやめるべきだということであった。その孔から漏れ出る力を利用するのが開闢の鬼道である。本来人が持つ魂の総量は微弱であり、そこから漏れ出たものを利用したところで大した結果にならない。ごくまれに魂の総量が多い者がおり、その者を一瞬にして万能の強者に仕立て上げることができるのが開闢の鬼道の真髄であるということだった。
人が霊感、超能力といった力に目覚めるには、偶発的な外的要因を除けば、生まれながらにして感覚を持っているか、長期に渡る修行をするしかないという。開闢の鬼道は邪道にあたる。無論、何か不具合があるからこその邪道であり、理由なくして邪道なり得ない。
邪道とは心に抱える不調が表出してしまうということだ。
これが俺にとっての影である。
二代目女王のトヨはまた別の形であったらしい。
万能の力とは方向性すら定まらないものであった。
だからこそこの開闢の鬼道は廃れていった、廃れさせたと記載されていた。
そして続くのは、もし何か偶発的に開闢の鬼道に目覚めた者がいた場合の制御方法についてだ。
「心穏やかに日々を過ごすこと」
樹神さんがそう読みあげて、目が笑っていない笑顔を作る。
「そんなんできてたら元から問題になってないわ! ボケ!」
そう叫んで資料を床に叩きつけようとしたところを北御門に止められていた。
樹神さんは「せやな」と同意を示し、床に広げた資料の中から真ん中ぐらいに置いてあるものを拾い上げる。その途中、貴重だと思われる資料を踏んだり、下躓いたりしていた。北御門はその度、青い顔をする。監督責任というやつが北御門にはあるのだろう。神様を監督するのはこれいかに。外部監査みたいなものだろうか。一蓮托生らしいからお前も一緒に怒られよう。そうしよう。
樹神さんが資料に目を通す。
「ええと、ふむふむ」
そう言ってから首を傾げる。
「邪馬台国の女王って何人かおるん?」
それに答えたのは北御門。
「二代目まではいたとわかっていますがそれが何か?」
「ああ、いやな、ウチてっきり邪馬台国の女王って一人だけやと思ってたから有名な卑弥呼が影に苦しんでたと思うてたんやけど、そうやなかったみたい。一応卑弥呼自身も開闢の鬼道の使い手ではあったらしいんやけどか影とは無縁やったって」
「では苦しんでたのは二代目の方でしょうか?」
「そーいうことになるな」
「二代目というと、たしか邪馬台国を滅ぼしたと言われる方ですね。その方が影に悩まされていたと?」
「そう書いてあるわ。トヨちゃん……って読むんかなこれ。まートヨちゃんは能力の高さからウチの師匠のお眼鏡にも適って卑弥呼の後釜になったそうやけど、初代の壁が高すぎたそうや。卑弥呼に従っておけばなんにも問題ない時代から、たまにポカをしては責められる日々にストレスが溜まって、トヨちゃんの力が暴走して邪馬台国滅亡ってこと書いてあるわ」
黙ってしまった北御門に代わり俺が手を挙げる。
「……それ、邪馬台国滅亡の謎も解けてしまったのでは」
ハッとした表情をされた。
「もうこれは逆に歴史的な資料を大事に保管しとったウチを褒めてくれてもええんちゃうかな」
俺は再び貴重だと思われる資料を踏んだり下躓いて戻ってきた樹神さんが荒らした資料を整える。
「開き直るかどうかは一旦置いといて、影が暴走する術について何か記載なかったですか?」
「ああ、うん。これ自体は当時の様子を描いたもんやけど、今更であるが我は今こう思う~的な感じで、開闢の鬼道の発現方法の見直しと制御方法の鍛錬の仕方、たまに後悔の念が綴られてたわ」
樹神さんがその後続けてそれぞれ教えてくれた。
発現方法の見直しとは、魂の外郭に小さな孔を空けることをやめるべきだということであった。その孔から漏れ出る力を利用するのが開闢の鬼道である。本来人が持つ魂の総量は微弱であり、そこから漏れ出たものを利用したところで大した結果にならない。ごくまれに魂の総量が多い者がおり、その者を一瞬にして万能の強者に仕立て上げることができるのが開闢の鬼道の真髄であるということだった。
人が霊感、超能力といった力に目覚めるには、偶発的な外的要因を除けば、生まれながらにして感覚を持っているか、長期に渡る修行をするしかないという。開闢の鬼道は邪道にあたる。無論、何か不具合があるからこその邪道であり、理由なくして邪道なり得ない。
邪道とは心に抱える不調が表出してしまうということだ。
これが俺にとっての影である。
二代目女王のトヨはまた別の形であったらしい。
万能の力とは方向性すら定まらないものであった。
だからこそこの開闢の鬼道は廃れていった、廃れさせたと記載されていた。
そして続くのは、もし何か偶発的に開闢の鬼道に目覚めた者がいた場合の制御方法についてだ。
「心穏やかに日々を過ごすこと」
樹神さんがそう読みあげて、目が笑っていない笑顔を作る。
「そんなんできてたら元から問題になってないわ! ボケ!」
そう叫んで資料を床に叩きつけようとしたところを北御門に止められていた。
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