妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗

文字の大きさ
上 下
154 / 229
8章 神と巫女

マゾヒストに人権を

しおりを挟む
「そもそも邪馬台国の場所については俺は関係ないですよね」

「もう一蓮托生やろ」

「ケイオスについてはそうですけど、それは完全に天樹会の問題でしょう」

「けったいなこと言わんとってよ」

「というかそれを俺に言ったところでどうしようもないでしょう」

 樹神さんが腰に手を当てて嘆息を吐く。

「馬鹿やなぁ。君は今や世界を救える唯一無二の人材やん? 君がこうしましょうって助言してくれればウチが怒られなくて済むってことや」

「あなた、神様でしょう」

「神様でも世間の荒波からは逃れられんのや。特に歴史家とか研究者とかいう部類の人間は権威というもんが通用しない頭のネジが吹っ飛んでる連中はアカンねん」

「大人しく怒られてみては」

「嫌やー。なんぼ年食っても怒られるんはなれへんって。いい大人は怒られたいとかいうけど、あんなんマゾヒストが市民権得るための戯言や!」

 以前工藤さんもといカレンさんに心配されて説教された時に少しいいなと思ってしまった俺は隠れマゾヒストなのかもしれない俺はこの話題から逃れるべく適当に並べられた資料を手に取った。

 大昔の文献なのだろう。茶色く変色した和紙に墨で大量の文字が書かれていた。達筆かつ今の文字形式と違うからか、書いてある内容が全く理解できなかった。

「邪馬台国でしたっけ。当時に紙の技術とかあったのですか?」

「あーいや、書かれたのは多分もっと後やろうな。まー平安とか安土桃山時代までのどっかあたりちゃう? うちが見初められた時には倉庫に眠ってたから、まーウチも詳しいことはわからんけど。そういや他にも封じられた妖刀の残骸とかもあったなぁ」

「適当ですね」

「ウチの師匠さん、必要最低限教えたら、あとは任せたとばかりに天上に昇っていったからな」

「……前から気になっていたのですがその天上に昇った神様を連れ戻せないのですか。そもそも天上について詳しく知らないのですが」

「無理やな。基本一方通行で、こっちから向こうに連絡取る手段もない。せやけど何故か向こうからこっちに一方通行なお願いは飛んでくることはできる。まーこれがお告げとか民衆の間で言われてるやつやな」

 樹神さんは頭をガシガシと掻く。

「んで天上っつーもんはな、言ってしまえば神たちの天国みたいなもんや。こっちの世界に対する権能とかを諸々返上する代わりに気楽な余生を送ることができるとこや。諸々の負債は地上に残ってる奴らに押しつけてな。せやから地上に神のほとんどさっさと天上に行ってしもたんや。あー自分もさっさと見切りつけて天上行っとけばよかったわぁ」

「どうして行かなかったんですか?」

「世界中を一通り回ったら天上行こうと思っとったんや。航海技術が発達して、そろそろかなぁとか考えてたら世界大戦とか冷戦始まってそれどころじゃなくなって、そのうちそのうち……って後回しにしてたら、みーんな天上行っとった。残った奴らはみんな今自分が消えたら地上に何かあったらって建前で残っとる。本音は互いにいつか天上に行ったあと、後ろ指差されたくないから互いに監視しとるんや」

「神様って案外人間じみてますね」

「ちゃう。人間が神様じみてるんや」

 樹神さんがその場に正座する。

「伏してお願いします。神様に至る妹様を持つ英雄であり時代が時代ならば現人神として奉られるであろう三刀はん、どうかこのわたくしめが怒られないようにご助力のほどを」

 土下座。

 背中の丸みが美しい土下座であった。そこまでして怒られたくないものなのか。

 北御門に視線を送る。

 両手を合わせられた。それはお願いという意味なのか、謝罪の意味なのか、はたまた神様に対するものなのか。最後のものでないことをこちらも祈りたい。

「……一緒に怒られましょうか」

「神様仏様三刀様!」

「樹神さんがいうと洒落になりませんからやめましょう。まじで」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

陰の行者が参る!

書仙凡人
ホラー
三上幸太郎、24歳。この物語の主人公である。 筋金入りのアホの子じゃった子供時代、こ奴はしてはならぬ事をして疫病神に憑りつかれた。 それ以降、こ奴の周りになぜか陰の気が集まり、不幸が襲い掛かる人生となったのじゃ。 見かねた疫病神は、陰の気を祓う為、幸太郎に呪術を授けた。 そして、幸太郎の不幸改善する呪術行脚が始まったのである。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。 しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。 そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。 このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。 しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。 妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。 それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。 それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。 彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。 だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。 そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

ゴブリンしか召喚出来なくても最強になる方法 ~無能とののしられて追放された宮廷召喚士、ボクっ娘王女と二人きりの冒険者パーティーで無双する~

石矢天
ファンタジー
「ラキス・トライク。貴様は今日限りでクビだ」 「ゴブリンしか召喚できない無能」 「平民あがりのクズ」  強大で希少なモンスターを召喚できるエリート貴族が集まる宮廷召喚士の中で、ゴブリンしか召喚できない平民出身のラキスはついに宮廷をクビになる。  ラキスはクビになったことは気にしていない。  宮廷で働けば楽な暮らしが出来ると聞いていたのに、政治だ派閥だといつも騒がしいばかりだったから良い機会だ。  だが無能だとかクズだとか言われたことは根に持っていた。  自分をクビにした宮廷召喚士長の企みを邪魔しようと思ったら、なぜか国の第二王女を暗殺計画から救ってしまった。 「ボクを助けた責任を取って」 「いくら払える?」 「……ではらう」 「なに?」 「対価はボクのカラダで払うって言ったんだ!!」  ただ楽な生活をして生きていたいラキスは、本人が望まないままボクっ娘王女と二人きりの冒険者パーティで無双し、なぜか国まで救ってしまうことになる。 本作品は三人称一元視点です。 「なろうRawi」でタイトルとあらすじを磨いてみました。 タイトル:S スコア9156 あらすじ:S スコア9175

処理中です...