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8章 神と巫女
マゾヒストに人権を
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「そもそも邪馬台国の場所については俺は関係ないですよね」
「もう一蓮托生やろ」
「ケイオスについてはそうですけど、それは完全に天樹会の問題でしょう」
「けったいなこと言わんとってよ」
「というかそれを俺に言ったところでどうしようもないでしょう」
樹神さんが腰に手を当てて嘆息を吐く。
「馬鹿やなぁ。君は今や世界を救える唯一無二の人材やん? 君がこうしましょうって助言してくれればウチが怒られなくて済むってことや」
「あなた、神様でしょう」
「神様でも世間の荒波からは逃れられんのや。特に歴史家とか研究者とかいう部類の人間は権威というもんが通用しない頭のネジが吹っ飛んでる連中はアカンねん」
「大人しく怒られてみては」
「嫌やー。なんぼ年食っても怒られるんはなれへんって。いい大人は怒られたいとかいうけど、あんなんマゾヒストが市民権得るための戯言や!」
以前工藤さんもといカレンさんに心配されて説教された時に少しいいなと思ってしまった俺は隠れマゾヒストなのかもしれない俺はこの話題から逃れるべく適当に並べられた資料を手に取った。
大昔の文献なのだろう。茶色く変色した和紙に墨で大量の文字が書かれていた。達筆かつ今の文字形式と違うからか、書いてある内容が全く理解できなかった。
「邪馬台国でしたっけ。当時に紙の技術とかあったのですか?」
「あーいや、書かれたのは多分もっと後やろうな。まー平安とか安土桃山時代までのどっかあたりちゃう? うちが見初められた時には倉庫に眠ってたから、まーウチも詳しいことはわからんけど。そういや他にも封じられた妖刀の残骸とかもあったなぁ」
「適当ですね」
「ウチの師匠さん、必要最低限教えたら、あとは任せたとばかりに天上に昇っていったからな」
「……前から気になっていたのですがその天上に昇った神様を連れ戻せないのですか。そもそも天上について詳しく知らないのですが」
「無理やな。基本一方通行で、こっちから向こうに連絡取る手段もない。せやけど何故か向こうからこっちに一方通行なお願いは飛んでくることはできる。まーこれがお告げとか民衆の間で言われてるやつやな」
樹神さんは頭をガシガシと掻く。
「んで天上っつーもんはな、言ってしまえば神たちの天国みたいなもんや。こっちの世界に対する権能とかを諸々返上する代わりに気楽な余生を送ることができるとこや。諸々の負債は地上に残ってる奴らに押しつけてな。せやから地上に神のほとんどさっさと天上に行ってしもたんや。あー自分もさっさと見切りつけて天上行っとけばよかったわぁ」
「どうして行かなかったんですか?」
「世界中を一通り回ったら天上行こうと思っとったんや。航海技術が発達して、そろそろかなぁとか考えてたら世界大戦とか冷戦始まってそれどころじゃなくなって、そのうちそのうち……って後回しにしてたら、みーんな天上行っとった。残った奴らはみんな今自分が消えたら地上に何かあったらって建前で残っとる。本音は互いにいつか天上に行ったあと、後ろ指差されたくないから互いに監視しとるんや」
「神様って案外人間じみてますね」
「ちゃう。人間が神様じみてるんや」
樹神さんがその場に正座する。
「伏してお願いします。神様に至る妹様を持つ英雄であり時代が時代ならば現人神として奉られるであろう三刀はん、どうかこのわたくしめが怒られないようにご助力のほどを」
土下座。
背中の丸みが美しい土下座であった。そこまでして怒られたくないものなのか。
北御門に視線を送る。
両手を合わせられた。それはお願いという意味なのか、謝罪の意味なのか、はたまた神様に対するものなのか。最後のものでないことをこちらも祈りたい。
「……一緒に怒られましょうか」
「神様仏様三刀様!」
「樹神さんがいうと洒落になりませんからやめましょう。まじで」
「もう一蓮托生やろ」
「ケイオスについてはそうですけど、それは完全に天樹会の問題でしょう」
「けったいなこと言わんとってよ」
「というかそれを俺に言ったところでどうしようもないでしょう」
樹神さんが腰に手を当てて嘆息を吐く。
「馬鹿やなぁ。君は今や世界を救える唯一無二の人材やん? 君がこうしましょうって助言してくれればウチが怒られなくて済むってことや」
「あなた、神様でしょう」
「神様でも世間の荒波からは逃れられんのや。特に歴史家とか研究者とかいう部類の人間は権威というもんが通用しない頭のネジが吹っ飛んでる連中はアカンねん」
「大人しく怒られてみては」
「嫌やー。なんぼ年食っても怒られるんはなれへんって。いい大人は怒られたいとかいうけど、あんなんマゾヒストが市民権得るための戯言や!」
以前工藤さんもといカレンさんに心配されて説教された時に少しいいなと思ってしまった俺は隠れマゾヒストなのかもしれない俺はこの話題から逃れるべく適当に並べられた資料を手に取った。
大昔の文献なのだろう。茶色く変色した和紙に墨で大量の文字が書かれていた。達筆かつ今の文字形式と違うからか、書いてある内容が全く理解できなかった。
「邪馬台国でしたっけ。当時に紙の技術とかあったのですか?」
「あーいや、書かれたのは多分もっと後やろうな。まー平安とか安土桃山時代までのどっかあたりちゃう? うちが見初められた時には倉庫に眠ってたから、まーウチも詳しいことはわからんけど。そういや他にも封じられた妖刀の残骸とかもあったなぁ」
「適当ですね」
「ウチの師匠さん、必要最低限教えたら、あとは任せたとばかりに天上に昇っていったからな」
「……前から気になっていたのですがその天上に昇った神様を連れ戻せないのですか。そもそも天上について詳しく知らないのですが」
「無理やな。基本一方通行で、こっちから向こうに連絡取る手段もない。せやけど何故か向こうからこっちに一方通行なお願いは飛んでくることはできる。まーこれがお告げとか民衆の間で言われてるやつやな」
樹神さんは頭をガシガシと掻く。
「んで天上っつーもんはな、言ってしまえば神たちの天国みたいなもんや。こっちの世界に対する権能とかを諸々返上する代わりに気楽な余生を送ることができるとこや。諸々の負債は地上に残ってる奴らに押しつけてな。せやから地上に神のほとんどさっさと天上に行ってしもたんや。あー自分もさっさと見切りつけて天上行っとけばよかったわぁ」
「どうして行かなかったんですか?」
「世界中を一通り回ったら天上行こうと思っとったんや。航海技術が発達して、そろそろかなぁとか考えてたら世界大戦とか冷戦始まってそれどころじゃなくなって、そのうちそのうち……って後回しにしてたら、みーんな天上行っとった。残った奴らはみんな今自分が消えたら地上に何かあったらって建前で残っとる。本音は互いにいつか天上に行ったあと、後ろ指差されたくないから互いに監視しとるんや」
「神様って案外人間じみてますね」
「ちゃう。人間が神様じみてるんや」
樹神さんがその場に正座する。
「伏してお願いします。神様に至る妹様を持つ英雄であり時代が時代ならば現人神として奉られるであろう三刀はん、どうかこのわたくしめが怒られないようにご助力のほどを」
土下座。
背中の丸みが美しい土下座であった。そこまでして怒られたくないものなのか。
北御門に視線を送る。
両手を合わせられた。それはお願いという意味なのか、謝罪の意味なのか、はたまた神様に対するものなのか。最後のものでないことをこちらも祈りたい。
「……一緒に怒られましょうか」
「神様仏様三刀様!」
「樹神さんがいうと洒落になりませんからやめましょう。まじで」
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