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8章 神と巫女
ノーシスターノーライフ
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汐見は話がひと段落したのを確認して「それじゃあ」と切り出す。
「汐見たちのユニット名考えよっか」
このアイドル、しれっと三人ユニットを前提とした提案をした。
妹は「そうそうユニット名も考えなきゃね」と一度受け入れ、違和感に気付き、ギョッとする。
「いやいや! なんでシオミンも一緒のユニットって話になってるの!」
「バレたかぁ」
汐見はいたずらっ子のように舌を出した。
「なあ、舞香。そこまで拒否反応示さないでもいいじゃないか。世間的にはお前の方がアイドルとしての格は劣るのだから、バーターでも一緒にいた方がお得だろう?」
「にーちゃんはシオミンのファンだから! 一緒にいたいからそういうこと言うんでしょうが!」
「……否定はしない」
他に目的があるとはいえ、そういう面がないというわけでもないから困った。
「それみたことか!」
鬼の首を取ったように騒ぐ妹の頭を上から押さえつけ、どうするべきか考える。下で妹が「横暴だ! 兄による圧政だ! 妹にも人権を! ノーシスターノーライフ!」などと騒ぐ妹を無視して考える。隣で工藤さんことカレンさんが「シスターはわたしですけどね」と微笑むのを見て「上手いこというなぁ」と関心しつつ考える。
「……いったんユニットの件は置いとくにしても、くど――カレンさんのデビューはいつにするか考えておく必要があるかもな」
それに反応を示したのは汐見。
「そもそもカレンは個人勢としてデビューでいいの? 一応今なら事務所に口利きできるけど。あーでも宮内庁とかお抱えのタレントってこともできるのかなぁ」
そこまでは考えていなかった。西野さんとかポンポコリンなどの大人組はある程度想定していそうだが、今まで口出ししていないところを見るとこちらがどうするか選んだらそれに従う方針なのだろう。
カレンさんが腕を組み、悩む。
「でもさぁ、宮内庁のお抱えが明らかに神道モチーフじゃなくてキリスト教な見た目なのどうなんだろ」
それはたしかに問題はありそうではある。色々邪推されるだろう。
汐見もうんうんと同意し「なら口利きしようか?」と訊く。
「うーん、ありがたいお話だけど断ろうかな。ずうっと活動するわけでもないだろうし、この事件が片付いたら引退するだろうしね」
「なら仕方ないね。気が変わったらいつでも連絡してね」
個人勢としてデビューが決まったカレンさんは、デビューの日取りや今後の戦略について妹と汐見を交えて話し合う。ユニットに関してはよく言えば侃侃諤諤、悪く言えば紛糾しつつ、意見を戦わせていた。
妹に呼び出された理由としてはシスターカレンのアバター発表がお題目だったのだろう。もう俺がいる意味もなくなった。戦略については単なるアイドル追っかけだった俺よりもアイドルそのものである汐見の方が力になるだろう。
タイミングを見てお暇するかと考えていると、示し合わせたようにメッセージが届く。
差出人は樹神さんだった。
内容はこうだ。
「影についてちょいと気になる文献見つけたからこっちこれる?」
「汐見たちのユニット名考えよっか」
このアイドル、しれっと三人ユニットを前提とした提案をした。
妹は「そうそうユニット名も考えなきゃね」と一度受け入れ、違和感に気付き、ギョッとする。
「いやいや! なんでシオミンも一緒のユニットって話になってるの!」
「バレたかぁ」
汐見はいたずらっ子のように舌を出した。
「なあ、舞香。そこまで拒否反応示さないでもいいじゃないか。世間的にはお前の方がアイドルとしての格は劣るのだから、バーターでも一緒にいた方がお得だろう?」
「にーちゃんはシオミンのファンだから! 一緒にいたいからそういうこと言うんでしょうが!」
「……否定はしない」
他に目的があるとはいえ、そういう面がないというわけでもないから困った。
「それみたことか!」
鬼の首を取ったように騒ぐ妹の頭を上から押さえつけ、どうするべきか考える。下で妹が「横暴だ! 兄による圧政だ! 妹にも人権を! ノーシスターノーライフ!」などと騒ぐ妹を無視して考える。隣で工藤さんことカレンさんが「シスターはわたしですけどね」と微笑むのを見て「上手いこというなぁ」と関心しつつ考える。
「……いったんユニットの件は置いとくにしても、くど――カレンさんのデビューはいつにするか考えておく必要があるかもな」
それに反応を示したのは汐見。
「そもそもカレンは個人勢としてデビューでいいの? 一応今なら事務所に口利きできるけど。あーでも宮内庁とかお抱えのタレントってこともできるのかなぁ」
そこまでは考えていなかった。西野さんとかポンポコリンなどの大人組はある程度想定していそうだが、今まで口出ししていないところを見るとこちらがどうするか選んだらそれに従う方針なのだろう。
カレンさんが腕を組み、悩む。
「でもさぁ、宮内庁のお抱えが明らかに神道モチーフじゃなくてキリスト教な見た目なのどうなんだろ」
それはたしかに問題はありそうではある。色々邪推されるだろう。
汐見もうんうんと同意し「なら口利きしようか?」と訊く。
「うーん、ありがたいお話だけど断ろうかな。ずうっと活動するわけでもないだろうし、この事件が片付いたら引退するだろうしね」
「なら仕方ないね。気が変わったらいつでも連絡してね」
個人勢としてデビューが決まったカレンさんは、デビューの日取りや今後の戦略について妹と汐見を交えて話し合う。ユニットに関してはよく言えば侃侃諤諤、悪く言えば紛糾しつつ、意見を戦わせていた。
妹に呼び出された理由としてはシスターカレンのアバター発表がお題目だったのだろう。もう俺がいる意味もなくなった。戦略については単なるアイドル追っかけだった俺よりもアイドルそのものである汐見の方が力になるだろう。
タイミングを見てお暇するかと考えていると、示し合わせたようにメッセージが届く。
差出人は樹神さんだった。
内容はこうだ。
「影についてちょいと気になる文献見つけたからこっちこれる?」
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