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8章 神と巫女
ストーカー系アイドル
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「えーレイちゃんは本名のままでも可愛いって」
妹は頬を膨らませる。
汐見はクスクスと笑った。
「それだとマイマイは自分の名前が可愛いって思ってるってことになるよ」
急所を突かれたらしく妹は苦虫を嚙み潰したような渋い顔をする。
「そ、それには、とてつもなく深い理由がありまして……」
「えー汐見気になるから教えて欲しいなーっ」
「俺も気になるな。どうして本名でやっているんだ」
テレビで活躍する芸能人ならまだしも電脳世界を主戦場にしたネットアイドルは基本的に本名は使わない。使うのはリアルの友人と遊ぶため本名登録のアバターが人気者になり、そのままタレントに移行した人ぐらいなものだ。俺もカテゴリ分けするとその中に入る。もっとも俺の場合、中学の頃にアバターを手に入れて、名前を考えるのが面倒で苗字である三刀を登録していただけなのだが。友達がいないからそうなっただけであるが、そうは考えたくないから自分の中ではそういうことにしている。
「まーもう理由は意味なくなっちゃったんだけどね。私がこのアバター作ったのってアイドルなるためってのは周知の事実だと思うけど、本当なら本名で活動して、人気者になって、ドルオタのにーちゃんが妹と同じ名前の奴がいるなーって気付いてもらって、それが私だって気付いて驚いてもらうという緻密で壮大な計画があったのです。まー死んじゃって初手から破綻してたわけなんですけど」
肩を竦める妹に俺はほくそ笑む。
「生きて活動してても大して人気出てなかったから初手のせいにすんじゃねえよ」
「はーっ!? こんな事件さえ起こらなければ今頃日本一のアイドルになって家族みんなのこと養ってあげてたんですけど! にーちゃんの奨学金だって肩代わりしてあげてもよかったんですけど!」
「そういうの捕らぬ狸の皮算用って言うんだぞ。良かったな、一つ賢くなって」
すぐに反論を口にしようとする妹を汐見が後ろから羽交い締めにして抑える。
「まあまあ、マイマイがお兄ちゃん思いってことはわかったから。あ、でも一つ訂正しなきゃね。マイマイはあのまま活動してたら順調に伸びてたと思うよ」
「……一応聞いておくが、どうして伸びるってわかったんだ?」
妹もこれは気になるようで汐見に羽交い締めされて嫌な顔をしているが大人しくなった。
「だって汐見は最初の配信からずっと追っかけたファンだから。もう少し登録者数が伸びたらこっちからコラボのお誘いして人気配信者にしようと計画してたんだ。けどサクラバさんに先にコラボ盗られたりして散々だったんだよ」
妹が恐怖におののいた顔で汐見の羽交い締めから逃れたいがためにもがく。
「やだー! やっぱり怖いってこの女!」
「えー! 単なるファンガールだから! その才能素敵だから広めたいの!」
「だったらまっとうに応援だけしてよ!」
「してるよー。サクラバさんとコラボしたあとに流行った動画あったでしょ。エネミーにミサイルランチャー打ち込んでループした動画。あれ作ったの汐見なんだよ」
「にーちゃん! この人ファン通り過ぎてて怖いんだけど!」
汐見は羽交い締めした妹を逃すまいと体勢を整え、抱き寄せ、座らせる。
「狂信者|《ファナティック》だからね」
そう答えた汐見はひまわりのような笑顔だった。
「にぃちゃーん。こいつどーにかしてー怖いよー」
対する妹は真夏の枯れ果てた紫陽花のようであった。
妹は頬を膨らませる。
汐見はクスクスと笑った。
「それだとマイマイは自分の名前が可愛いって思ってるってことになるよ」
急所を突かれたらしく妹は苦虫を嚙み潰したような渋い顔をする。
「そ、それには、とてつもなく深い理由がありまして……」
「えー汐見気になるから教えて欲しいなーっ」
「俺も気になるな。どうして本名でやっているんだ」
テレビで活躍する芸能人ならまだしも電脳世界を主戦場にしたネットアイドルは基本的に本名は使わない。使うのはリアルの友人と遊ぶため本名登録のアバターが人気者になり、そのままタレントに移行した人ぐらいなものだ。俺もカテゴリ分けするとその中に入る。もっとも俺の場合、中学の頃にアバターを手に入れて、名前を考えるのが面倒で苗字である三刀を登録していただけなのだが。友達がいないからそうなっただけであるが、そうは考えたくないから自分の中ではそういうことにしている。
「まーもう理由は意味なくなっちゃったんだけどね。私がこのアバター作ったのってアイドルなるためってのは周知の事実だと思うけど、本当なら本名で活動して、人気者になって、ドルオタのにーちゃんが妹と同じ名前の奴がいるなーって気付いてもらって、それが私だって気付いて驚いてもらうという緻密で壮大な計画があったのです。まー死んじゃって初手から破綻してたわけなんですけど」
肩を竦める妹に俺はほくそ笑む。
「生きて活動してても大して人気出てなかったから初手のせいにすんじゃねえよ」
「はーっ!? こんな事件さえ起こらなければ今頃日本一のアイドルになって家族みんなのこと養ってあげてたんですけど! にーちゃんの奨学金だって肩代わりしてあげてもよかったんですけど!」
「そういうの捕らぬ狸の皮算用って言うんだぞ。良かったな、一つ賢くなって」
すぐに反論を口にしようとする妹を汐見が後ろから羽交い締めにして抑える。
「まあまあ、マイマイがお兄ちゃん思いってことはわかったから。あ、でも一つ訂正しなきゃね。マイマイはあのまま活動してたら順調に伸びてたと思うよ」
「……一応聞いておくが、どうして伸びるってわかったんだ?」
妹もこれは気になるようで汐見に羽交い締めされて嫌な顔をしているが大人しくなった。
「だって汐見は最初の配信からずっと追っかけたファンだから。もう少し登録者数が伸びたらこっちからコラボのお誘いして人気配信者にしようと計画してたんだ。けどサクラバさんに先にコラボ盗られたりして散々だったんだよ」
妹が恐怖におののいた顔で汐見の羽交い締めから逃れたいがためにもがく。
「やだー! やっぱり怖いってこの女!」
「えー! 単なるファンガールだから! その才能素敵だから広めたいの!」
「だったらまっとうに応援だけしてよ!」
「してるよー。サクラバさんとコラボしたあとに流行った動画あったでしょ。エネミーにミサイルランチャー打ち込んでループした動画。あれ作ったの汐見なんだよ」
「にーちゃん! この人ファン通り過ぎてて怖いんだけど!」
汐見は羽交い締めした妹を逃すまいと体勢を整え、抱き寄せ、座らせる。
「狂信者|《ファナティック》だからね」
そう答えた汐見はひまわりのような笑顔だった。
「にぃちゃーん。こいつどーにかしてー怖いよー」
対する妹は真夏の枯れ果てた紫陽花のようであった。
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