妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗

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8章 神と巫女

声明その3

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 こんな噓、妹に近しい人間ならばすぐに見破るだろう。

 ゆえに根回しとして、会見前に両親をはじめとした葬儀参列者には少なくない額を積んで黙ってもらうことになった。政府の予備費などはこういう時に使われるらしい。

 両親は最初これに激怒したらしい。

「妹の尊厳を汚すな」

「あの妹を騙る偽物を許すな」

「総司は縁を切ってもまだ迷惑をかけるのか」

 など非難轟轟だったらしい。

 妹への愛はひとしおだった両親ゆえ、こうなるのは目に見えていた。俺としては人の親としては娘への愛はあるようでむしろ安心もした。俺への愛のなさは諦めているので至極どうでもいい。妹がちゃんと愛されていることが大事なのだ。

 記憶が戻り、肉体を手に入れても戻る家がないのは妹はきっと悲しむだろう。

 お金で解決する問題ではないときっぱり断った両親に対し底値だった信頼度が少しばかり回復した。だがそれで困るのは政府である。俺と妹の両親ゆえにあまり強く出れない。俺はともかく、今回の事件が上手く解決できた時に神となった妹が政府と不仲になっては困るからだ。

 いやはや政府には頭が下がる。

 解決後も考えて動かねばならないとは。

 政府は仲裁に俺を挟もうとしたが、縁を切られたから協力できないと突っぱねたから気楽なものである。

 これは俺のせいではない。両親のせいだからと逃げ回った。

 政府も複雑な家庭環境だと知るとあまり強く出れないようだった。後ろ盾に樹神さんがいるのも大きいと思う。

 困り果てた政府は大きな決断をすることになる。どうせ妹が肉体を取り戻したあとでオカルト的な存在が本当にいることを知られてしまうならば、先にぶっちゃけておこうというのだ。この決断は前例主義が蔓延る政府、官僚からすると非常に重い決断であったらしい。それだけケイオスによる諸外国の被害が甚大で、そのケイオスを輩出した国として突き上げが酷いことになっているのだろう。

 こうして両親は妹が今どんな状況にあるのかを知った。

 半信半疑である両親ではあったが、内閣総理大臣まで出張ったことで信じる気になったようだ。無論、ケイオスに関わる情報などは伏せられたが俺が妹のために動いていることは伝えられた。

 そうなると妹を溺愛し、俺をよくわからないものとして見てきた両親の手のひらはぐるんぐるんと回る。

 決して顔を見せようとしない俺に伝言で「縁を切るというのは撤回する。舞香のために全力を尽くせ。応援している」とどの口が言えたのかわからないことをほざいた。

 こんな親が存在する世界なんて滅んでしまえばいいのに、そう思ったら影が暴れ出しそうなので心を殺して乗り切った。妹のためにやるべきことは変わらないのだと自分に言い聞かせた。

 政府のポケットマネーと俺の心痛という犠牲の上でこの調査結果の発表は成し得た。

 あとは世間の反応がどう変わるか。

 ユニット結成の追い風が吹くことを祈るばかりである。
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