146 / 229
8章 神と巫女
声明その3
しおりを挟む
こんな噓、妹に近しい人間ならばすぐに見破るだろう。
ゆえに根回しとして、会見前に両親をはじめとした葬儀参列者には少なくない額を積んで黙ってもらうことになった。政府の予備費などはこういう時に使われるらしい。
両親は最初これに激怒したらしい。
「妹の尊厳を汚すな」
「あの妹を騙る偽物を許すな」
「総司は縁を切ってもまだ迷惑をかけるのか」
など非難轟轟だったらしい。
妹への愛はひとしおだった両親ゆえ、こうなるのは目に見えていた。俺としては人の親としては娘への愛はあるようでむしろ安心もした。俺への愛のなさは諦めているので至極どうでもいい。妹がちゃんと愛されていることが大事なのだ。
記憶が戻り、肉体を手に入れても戻る家がないのは妹はきっと悲しむだろう。
お金で解決する問題ではないときっぱり断った両親に対し底値だった信頼度が少しばかり回復した。だがそれで困るのは政府である。俺と妹の両親ゆえにあまり強く出れない。俺はともかく、今回の事件が上手く解決できた時に神となった妹が政府と不仲になっては困るからだ。
いやはや政府には頭が下がる。
解決後も考えて動かねばならないとは。
政府は仲裁に俺を挟もうとしたが、縁を切られたから協力できないと突っぱねたから気楽なものである。
これは俺のせいではない。両親のせいだからと逃げ回った。
政府も複雑な家庭環境だと知るとあまり強く出れないようだった。後ろ盾に樹神さんがいるのも大きいと思う。
困り果てた政府は大きな決断をすることになる。どうせ妹が肉体を取り戻したあとでオカルト的な存在が本当にいることを知られてしまうならば、先にぶっちゃけておこうというのだ。この決断は前例主義が蔓延る政府、官僚からすると非常に重い決断であったらしい。それだけケイオスによる諸外国の被害が甚大で、そのケイオスを輩出した国として突き上げが酷いことになっているのだろう。
こうして両親は妹が今どんな状況にあるのかを知った。
半信半疑である両親ではあったが、内閣総理大臣まで出張ったことで信じる気になったようだ。無論、ケイオスに関わる情報などは伏せられたが俺が妹のために動いていることは伝えられた。
そうなると妹を溺愛し、俺をよくわからないものとして見てきた両親の手のひらはぐるんぐるんと回る。
決して顔を見せようとしない俺に伝言で「縁を切るというのは撤回する。舞香のために全力を尽くせ。応援している」とどの口が言えたのかわからないことをほざいた。
こんな親が存在する世界なんて滅んでしまえばいいのに、そう思ったら影が暴れ出しそうなので心を殺して乗り切った。妹のためにやるべきことは変わらないのだと自分に言い聞かせた。
政府のポケットマネーと俺の心痛という犠牲の上でこの調査結果の発表は成し得た。
あとは世間の反応がどう変わるか。
ユニット結成の追い風が吹くことを祈るばかりである。
ゆえに根回しとして、会見前に両親をはじめとした葬儀参列者には少なくない額を積んで黙ってもらうことになった。政府の予備費などはこういう時に使われるらしい。
両親は最初これに激怒したらしい。
「妹の尊厳を汚すな」
「あの妹を騙る偽物を許すな」
「総司は縁を切ってもまだ迷惑をかけるのか」
など非難轟轟だったらしい。
妹への愛はひとしおだった両親ゆえ、こうなるのは目に見えていた。俺としては人の親としては娘への愛はあるようでむしろ安心もした。俺への愛のなさは諦めているので至極どうでもいい。妹がちゃんと愛されていることが大事なのだ。
記憶が戻り、肉体を手に入れても戻る家がないのは妹はきっと悲しむだろう。
お金で解決する問題ではないときっぱり断った両親に対し底値だった信頼度が少しばかり回復した。だがそれで困るのは政府である。俺と妹の両親ゆえにあまり強く出れない。俺はともかく、今回の事件が上手く解決できた時に神となった妹が政府と不仲になっては困るからだ。
いやはや政府には頭が下がる。
解決後も考えて動かねばならないとは。
政府は仲裁に俺を挟もうとしたが、縁を切られたから協力できないと突っぱねたから気楽なものである。
これは俺のせいではない。両親のせいだからと逃げ回った。
政府も複雑な家庭環境だと知るとあまり強く出れないようだった。後ろ盾に樹神さんがいるのも大きいと思う。
困り果てた政府は大きな決断をすることになる。どうせ妹が肉体を取り戻したあとでオカルト的な存在が本当にいることを知られてしまうならば、先にぶっちゃけておこうというのだ。この決断は前例主義が蔓延る政府、官僚からすると非常に重い決断であったらしい。それだけケイオスによる諸外国の被害が甚大で、そのケイオスを輩出した国として突き上げが酷いことになっているのだろう。
こうして両親は妹が今どんな状況にあるのかを知った。
半信半疑である両親ではあったが、内閣総理大臣まで出張ったことで信じる気になったようだ。無論、ケイオスに関わる情報などは伏せられたが俺が妹のために動いていることは伝えられた。
そうなると妹を溺愛し、俺をよくわからないものとして見てきた両親の手のひらはぐるんぐるんと回る。
決して顔を見せようとしない俺に伝言で「縁を切るというのは撤回する。舞香のために全力を尽くせ。応援している」とどの口が言えたのかわからないことをほざいた。
こんな親が存在する世界なんて滅んでしまえばいいのに、そう思ったら影が暴れ出しそうなので心を殺して乗り切った。妹のためにやるべきことは変わらないのだと自分に言い聞かせた。
政府のポケットマネーと俺の心痛という犠牲の上でこの調査結果の発表は成し得た。
あとは世間の反応がどう変わるか。
ユニット結成の追い風が吹くことを祈るばかりである。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説


高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。
マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。
空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。
しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。
すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。
緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。
小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる