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8章 神と巫女
声明その1
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アイドル汐見柚子の活動休止発表から三日が経過した。
世間は未だ何故休止したのか各自が想像を巡らせてありもしない物語を語ったり、事務所に直接聞きただそうと騒いだり、ワイドショーではエネミー事件以外で久しぶりにあったビッグニュースで盛り上がっていた。
汐見はまだ活動復帰の宣言をしていない。
俺は早めに復帰宣言をしたらどうかと提案してはいるのだが、汐見は「今発表したところでお騒がせアイドルぐらいにしかならないし、メンタル不調説があるの。だからどうせ復帰発表するなら一緒にユニット結成の件も発表したい」と言って譲らなかった。
汐見が所属していた事務所には既にユニット結成の件について話は通している。汐見については直接話したのだが、事務所の方は政府関係者から――とはいっても西野さんから話をしてもらった。精霊とか汐見がAIだとかは伏せたまま相談したのだが、汐見が突然黙って活動休止宣言をしたものだから向こうは色々とてんてこ舞いな状況だったらしい。そこで事情を知っている政府関係者から接触があったものだから、向こうは汐見が攫われて危険な状態にあるとか、犯罪を犯したとか、まさかスパイだったのではなどと邪推して色々大変だったらしい。まともに話を聞いてもらうまでが一番大変だったと西野さんは疲れた顔をしていた。
もっとも話を聞いてもらうまでが大変だったのであり、ユニット結成の件については大過なく了承は貰えそうだった。汐見のマネージャーだった人からも復帰報告とユニット結成は同時発表することがベストだということで一旦この状況については静観することを約束してくれた。つまりはマスコミ対応は全てしてくれるという貧乏くじを引いてくれるということだ。おそらく大人同士のやり取りで、将来的に他のアイドルや配信者などを公的機関のイベントに使うことと引き換えにしたのだろう。
また、この件で布石を打っておくべく政府はある発表をした。
それは『エネミー討伐作戦におけるプロゲーマーサクラバの行動および作戦参加者に是非、また三刀総司とその親族に関する調査結果』であった。
俺だけフルネームなのことにモヤモヤした思いはあるが、もはや自宅を特定された俺に失うものはないと自分に言い聞かせる。
この発表をすることの意図はいくつかある。
分かりやすく順番に切り取っていきたいと思う。
会見の場で本作戦の総責任者である電脳科学庁の大臣が緊張した面持ちで発表した。
「本作戦におけるプロゲーマーサクラバ氏の発言にあった三刀氏が敵と内通していると発言した件ですが、それは誤りであると確認が取れました」
まずは桜庭の行動に関する政府の公式見解を出すこと。指針を示すことで今後の行動に対し圧をかける狙いはある。ただし、これは本命ではない。これはエネミー討伐作戦に関する声明を出すうえで避けられないことであったからだ。ゆえに今まで政府は出せずにいたともいえる。なぜなら自分たちの重大なミスを認めることになるからだ。
「また、本作戦終了後からサクラバ氏の消息不明になっていることについては引き続き調査中となっています。ですが先の発言から何らかの形で事件に関わっているものと考えております」
この発言によって電脳科学庁は本作戦のリーダーとして桜庭を選んだことの咎を認めたことになる。大臣更迭も免れない発言である。この会見が決まった直後には更迭になる定めであった。樹神さんが大臣に「こないなって申し訳ない」と謝罪した時のことを聞いたのだが、大臣は「次に繋がる辞め方をするのが大臣の一番大事な仕事ですから」といい笑顔をしたそうだ。
アンジェラが暴れて胃を痛めたり、俺に土下座したり、最後に更迭までする羽目になって笑顔で辞められるとは。我が家に乗り込んで来た中年男性同様、逆恨みされてもおかしくないのにとても清々しかった。
今時珍しいまともな政治家なのだろう。
政治家のことなど何一つ知らないが。
さて次は作戦参加者の行動についてだ。
世間は未だ何故休止したのか各自が想像を巡らせてありもしない物語を語ったり、事務所に直接聞きただそうと騒いだり、ワイドショーではエネミー事件以外で久しぶりにあったビッグニュースで盛り上がっていた。
汐見はまだ活動復帰の宣言をしていない。
俺は早めに復帰宣言をしたらどうかと提案してはいるのだが、汐見は「今発表したところでお騒がせアイドルぐらいにしかならないし、メンタル不調説があるの。だからどうせ復帰発表するなら一緒にユニット結成の件も発表したい」と言って譲らなかった。
汐見が所属していた事務所には既にユニット結成の件について話は通している。汐見については直接話したのだが、事務所の方は政府関係者から――とはいっても西野さんから話をしてもらった。精霊とか汐見がAIだとかは伏せたまま相談したのだが、汐見が突然黙って活動休止宣言をしたものだから向こうは色々とてんてこ舞いな状況だったらしい。そこで事情を知っている政府関係者から接触があったものだから、向こうは汐見が攫われて危険な状態にあるとか、犯罪を犯したとか、まさかスパイだったのではなどと邪推して色々大変だったらしい。まともに話を聞いてもらうまでが一番大変だったと西野さんは疲れた顔をしていた。
もっとも話を聞いてもらうまでが大変だったのであり、ユニット結成の件については大過なく了承は貰えそうだった。汐見のマネージャーだった人からも復帰報告とユニット結成は同時発表することがベストだということで一旦この状況については静観することを約束してくれた。つまりはマスコミ対応は全てしてくれるという貧乏くじを引いてくれるということだ。おそらく大人同士のやり取りで、将来的に他のアイドルや配信者などを公的機関のイベントに使うことと引き換えにしたのだろう。
また、この件で布石を打っておくべく政府はある発表をした。
それは『エネミー討伐作戦におけるプロゲーマーサクラバの行動および作戦参加者に是非、また三刀総司とその親族に関する調査結果』であった。
俺だけフルネームなのことにモヤモヤした思いはあるが、もはや自宅を特定された俺に失うものはないと自分に言い聞かせる。
この発表をすることの意図はいくつかある。
分かりやすく順番に切り取っていきたいと思う。
会見の場で本作戦の総責任者である電脳科学庁の大臣が緊張した面持ちで発表した。
「本作戦におけるプロゲーマーサクラバ氏の発言にあった三刀氏が敵と内通していると発言した件ですが、それは誤りであると確認が取れました」
まずは桜庭の行動に関する政府の公式見解を出すこと。指針を示すことで今後の行動に対し圧をかける狙いはある。ただし、これは本命ではない。これはエネミー討伐作戦に関する声明を出すうえで避けられないことであったからだ。ゆえに今まで政府は出せずにいたともいえる。なぜなら自分たちの重大なミスを認めることになるからだ。
「また、本作戦終了後からサクラバ氏の消息不明になっていることについては引き続き調査中となっています。ですが先の発言から何らかの形で事件に関わっているものと考えております」
この発言によって電脳科学庁は本作戦のリーダーとして桜庭を選んだことの咎を認めたことになる。大臣更迭も免れない発言である。この会見が決まった直後には更迭になる定めであった。樹神さんが大臣に「こないなって申し訳ない」と謝罪した時のことを聞いたのだが、大臣は「次に繋がる辞め方をするのが大臣の一番大事な仕事ですから」といい笑顔をしたそうだ。
アンジェラが暴れて胃を痛めたり、俺に土下座したり、最後に更迭までする羽目になって笑顔で辞められるとは。我が家に乗り込んで来た中年男性同様、逆恨みされてもおかしくないのにとても清々しかった。
今時珍しいまともな政治家なのだろう。
政治家のことなど何一つ知らないが。
さて次は作戦参加者の行動についてだ。
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