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6章 一転
良いニュースと悪いニュース
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昔は初々しい村娘、見た目は美人、中身はスケベなオバさんの魔の手から救い出してくれたのは煙草が映えるダンディズム溢れる堂島さんであった。
西野さんとポンポコリンを連れて現れた彼はこの光景を見て、呆れた表情を浮かべつつ黙って樹神さんを引き剥がしてくれた。それでも「もうちょいやから!」などと言って暴れる樹神さんだったが「神様といえど性的暴行で逮捕しますよ」と注意してようやく大人しくなった。
堂島さんが散らばった衣類を拾いあげて、俺に渡すと改めて樹神さんに向き直る。
「貴女ほどの人が何をやっているのですか」
そう言って呆れた顔を手で支えた。
「ちょっとしたお茶目やん」
「逮捕しますよ」
「冗談通じないやっちゃなぁ」
不貞腐れた顔をする。
「ま、パンツまで脱がすんは悪ノリやけど」
タチの悪い冗談百パーセントであった。いや、セクシャルハラスメントでしかなかった。
堂島さんはため息を吐く。
「パンツの件は追々話しましょう。脱がしていた理由を教えてください」
樹神さんから刀が壊れ、影が襲いかかるまでの経緯が説明された。
「――そんでウチは思ったわけや。これ、絶対に何か細工されてるやろと」
「細工ですか?」と訝しむ堂島さん。
「いくらなんでもあの影は"力"を扱い始めて間もない人間が出せるもんやない。あるとしたら小細工されてるに違いないやろ。だから心を覗くために上着脱いで貰ったんや」
俺の体に小細工されている。その推理に俺は思い当たる節はあった。心の力を使えるようになったのはアンジェラのまじないによるものだ。ならばアンジェラが何かしたと考えるのが妥当である。
「この無駄にある力も細工によるものですか?」
「いんや、そっちは自前やろな」
少しばかり残念であった。アンジェラの力が俺の中に残っていると思えれば形見だと思えたのに。
「せやからちょいと心覗かせてな」
樹神さんはそう言って未だパンツ一丁な俺の胸に手を当てる。拒否権を行使する暇もないまま、樹神さんは目を瞑った。他の面々ははパンツ一丁な俺と樹神さんをひたすらに眺める時間が生まれた。ちょっとした羞恥プレイであった。もし俺が筋肉隆々であったならば自信満々にポージングの一つでも行っただろうが、モヤシ野郎のソレでは申し訳なさが勝る。つまらないものを見せてしまって申し訳ない気分になってしまう。
羞恥心を抱えたまま数分ほど経ったが未だに樹神さんが目を開ける様子はない。
心を覗かれているらしいが俺には探られている感覚はなかった。むずがゆささえ覚えないので実はこれも悪ノリの一種ではないかと疑心暗鬼に陥ってしまう。その場合、単に男の体に触れたかっただけの見境がないドスケベオバさんになってしまうのでそうでないことを祈りたい。
「これいつまで掛かりそうなんですかぁ?」
声をあげたのはポンポコリンであった。
西野さんは「我慢しなさい」と注意するも「やることないからぁ、彼も暇そうなら伝えちゃっていいかなぁと思うんですけどぉ」とのんびりした口調で反論する。
「ま、伝えるだけならいっかな」
納得した西野さん。
「それじゃ伝えますねぇ。AIなんだけど君とは絶対に会いたくないって言い張ってるんだけど理由は君に聞けって言われたのぉ。なにか知ってる?」
ポンポコリンがそう告げた直後、樹神さんに目を開けた。
次の瞬間には大笑いしていた。
皆が意味が分からず固まる中、樹神さんは俺の肩をバンバンと叩いてくる。
「喜び! あの子は君の中で生きとった!」
どうやら悪いことと良いことを同時に伝えられるとどんな顔をしていいかわからなくなるものらしい。どっちに反応していいか脳が悩んだ結果、悪い方は一旦忘れて喜ぶことにした。ポンポコリンが「こっちの話はぁ?」とむくれていたが西野さんに「黙っておきなさい」と窘められていた。
西野さんとポンポコリンを連れて現れた彼はこの光景を見て、呆れた表情を浮かべつつ黙って樹神さんを引き剥がしてくれた。それでも「もうちょいやから!」などと言って暴れる樹神さんだったが「神様といえど性的暴行で逮捕しますよ」と注意してようやく大人しくなった。
堂島さんが散らばった衣類を拾いあげて、俺に渡すと改めて樹神さんに向き直る。
「貴女ほどの人が何をやっているのですか」
そう言って呆れた顔を手で支えた。
「ちょっとしたお茶目やん」
「逮捕しますよ」
「冗談通じないやっちゃなぁ」
不貞腐れた顔をする。
「ま、パンツまで脱がすんは悪ノリやけど」
タチの悪い冗談百パーセントであった。いや、セクシャルハラスメントでしかなかった。
堂島さんはため息を吐く。
「パンツの件は追々話しましょう。脱がしていた理由を教えてください」
樹神さんから刀が壊れ、影が襲いかかるまでの経緯が説明された。
「――そんでウチは思ったわけや。これ、絶対に何か細工されてるやろと」
「細工ですか?」と訝しむ堂島さん。
「いくらなんでもあの影は"力"を扱い始めて間もない人間が出せるもんやない。あるとしたら小細工されてるに違いないやろ。だから心を覗くために上着脱いで貰ったんや」
俺の体に小細工されている。その推理に俺は思い当たる節はあった。心の力を使えるようになったのはアンジェラのまじないによるものだ。ならばアンジェラが何かしたと考えるのが妥当である。
「この無駄にある力も細工によるものですか?」
「いんや、そっちは自前やろな」
少しばかり残念であった。アンジェラの力が俺の中に残っていると思えれば形見だと思えたのに。
「せやからちょいと心覗かせてな」
樹神さんはそう言って未だパンツ一丁な俺の胸に手を当てる。拒否権を行使する暇もないまま、樹神さんは目を瞑った。他の面々ははパンツ一丁な俺と樹神さんをひたすらに眺める時間が生まれた。ちょっとした羞恥プレイであった。もし俺が筋肉隆々であったならば自信満々にポージングの一つでも行っただろうが、モヤシ野郎のソレでは申し訳なさが勝る。つまらないものを見せてしまって申し訳ない気分になってしまう。
羞恥心を抱えたまま数分ほど経ったが未だに樹神さんが目を開ける様子はない。
心を覗かれているらしいが俺には探られている感覚はなかった。むずがゆささえ覚えないので実はこれも悪ノリの一種ではないかと疑心暗鬼に陥ってしまう。その場合、単に男の体に触れたかっただけの見境がないドスケベオバさんになってしまうのでそうでないことを祈りたい。
「これいつまで掛かりそうなんですかぁ?」
声をあげたのはポンポコリンであった。
西野さんは「我慢しなさい」と注意するも「やることないからぁ、彼も暇そうなら伝えちゃっていいかなぁと思うんですけどぉ」とのんびりした口調で反論する。
「ま、伝えるだけならいっかな」
納得した西野さん。
「それじゃ伝えますねぇ。AIなんだけど君とは絶対に会いたくないって言い張ってるんだけど理由は君に聞けって言われたのぉ。なにか知ってる?」
ポンポコリンがそう告げた直後、樹神さんに目を開けた。
次の瞬間には大笑いしていた。
皆が意味が分からず固まる中、樹神さんは俺の肩をバンバンと叩いてくる。
「喜び! あの子は君の中で生きとった!」
どうやら悪いことと良いことを同時に伝えられるとどんな顔をしていいかわからなくなるものらしい。どっちに反応していいか脳が悩んだ結果、悪い方は一旦忘れて喜ぶことにした。ポンポコリンが「こっちの話はぁ?」とむくれていたが西野さんに「黙っておきなさい」と窘められていた。
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