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6章 一転
流派が違えば何もかも違う
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アイドルに勧誘された工藤さんが必死の抵抗を見せてから一日が経過した。翌日も妹と樹神さん、それと西野さんは説得する予定で俺らとは別行動であった。
俺らとは俺と北御門のことである。
俺らは旅館の裏にある山にいた。
新緑が生い茂る山の中に拓けた場所があった。そこはこの地に拠点を置く退魔組織の修行場として使われている場所であった。もっとも、近代化が進んだ今ではこの場所はほとんど使われることはなくなり、俺ら以外に誰も見当たらない。裏を返せば余所者である北御門に貸しても誰からも文句が出ない場所であった。
そこで俺は切り株に腰掛け、真剣を持った北御門を眺めていた。
「僕たち退魔師は大きく分けて三通りの方法で霊的存在と対峙するんだ」
そう言って刀を構える。その刀身はほんのりとした光を帯びていた。
「僕は道具を使って対峙する流派。今の退魔師のほとんどはこれに分類されるかな。今見せてる刀も光ってるでしょ? これは刀に霊気を込めてるんだ」
霊気というのは初めて聞く概念であったが、北御門がそのまま続きを話そうとするので質問は後回しにした。おそらく心とか魂とかそこらへんの用語を言い換えたものだろう。そう当たりをつけた。
「もう一つは使い魔を駆使すること。霊的存在と契約を結んで力を貸してもらう形式だね。ただ最近はなり手が少なくなってて代々そういうものと契約してる一族しかいなくなってるのが現状かな。もう一つは絶滅してるようなものだけど、霊力そのもので戦う人だね。メリットがないわけではないけど、デメリットが多すぎるからわざわざこれで戦う人なんていないかな」
三つの内容を聞いて自分にどれが当てはまるのかを考える。
「俺はゲーム内の武器を使ってるから、道具を使うものか?」
そう問うも北御門は渋い顔をする。
「それでいうと全部ってなっちゃうかなぁ」
「どういうことだ?」
「ゲーム内の武器を使う行為は道具を使う流派。半神と契約して戦えるようになった行為は使い魔みたいなものだし、霊力で身を守るなんて行為はまさにそのもので戦う行為だからなぁ」
「聞きそびれてたが霊力ってなんなんだ」
「流派によって言い方とか考え方とかまちまちなんだけど僕は概念に与える影響力って考えかな。幽霊とかが見えるだけの人とかは概念を捉えるだけの力って意味で考えてる。ちなみにアンジェラさんはなんて言ってたのか気になるな」
「魂とか心とかそういう風に言ってたな」
俺自身あまり詳しくは思い出せずそう曖昧に答えた。
すると北御門が「それほんと?」と苦笑する。
「たしかそう言ってたぐらいだからそこまでアテにならないぞ」
「いやでもそうだとすると三刀さんの戦い方とかがああなるのも納得かなぁ」
「一人で納得してくれないで教えてくれないか」
「ごめんね。まさか本当に使ってる人がいるなんて思わなくて驚いたんだ」
北御門は刀を鞘にしまい、言った。
「開闢の鬼道。神をも殺す鬼の力だよ」
「鬼の力って……俺は単なる人間だぞ」
そう返すと北御門は「大昔の人の比喩だから細かいことは気にしないで」と元も子もないことで返してくる。
「この場合の鬼っていうのは人ならざる力と精神性を持った人の例えかな。開闢の鬼道っていうのは、地獄を作り上げる鬼神に至った人を指した言葉だよ」
「地獄を作り上げるっていうと閻魔大王とかか?」
「あの人は地獄の管理と死者がどこへ送られるかの選別がメイン業務だから違うかなぁ。そもそも地獄ってどうやってできたのかわからなすぎる部分があるんだ」
「樹神さんも知らないのか?」
「比較的に新しい神になるからね。そのあたりの事情を知っているのは最低でも邪馬台国とか四大文明が起こる頃にいた神様じゃないとわからないんじゃないかなぁ」
「そりゃ気が遠くなる話だな」
「ま、僕たちはそんな昔の話は置いとこうよ。問題はそんな力を持った人なんていないからどう修行をつけていいかわからない点かな。アンジェラさんから力を使う時にコツとか聞かなかったの?」
「いくつかあったな」
「例えば?」
心なしか北御門の目が輝いているように思えた。おそらく他流派の話を聞く機会は珍しいからワクワクするものなのだろう。俺自身もシオミンが他アイドルとの共演する際に、そのファンの方々と交流する機会があったりするのだが、アイドルの気質による応援の仕方の変化やユニットを組んでいる場合の掛け声の合わせ方など独自メソッドがあったりするから学びになることが多い。
「武器を使う際は心を込めるようにとか言われたな」
「なるほど。そこら辺は似たような感じかな」
「他には強い心を持てとかもあったな」
「呪術に対抗するための何かかな。具体的にどんなことを指してるのかわかったりするかい?」
こういうとアンジェラが誤解されるのではないかと逡巡したもののアンジェラがこういったのだから俺は間違ってないと自分に言い聞かせる。
「野郎ぶっ殺すの精神」
北御門は腕を組み、上を向いたり、下を向いたり、難しい顔をしたりする。
「思ったより精神性しかなくて驚いたよ」
「けどわかりやすいだろう?」
「ごめんだけど、僕にはわかりにくかったかな」
こんなにわかりやすいものなのに何故わからないのだろうか。もしかすると北御門は友人が多いから人を殺したいと思ったことがないのかもしれないなと思った。ただそうなると開闢の鬼道というものは、神殺しの鬼の力とか言われているがボッチの力になってしまう。俺もアンジェラも友人が少ないので概ね間違っていなさそうなのが余計に辛い。
「んーわからないとなると、しばらくは基礎練習がメインかな。そこらへんなら他流派の僕でもつけられるだろうし。本格的な修行は会長か西野さんあたりに誰かいい人いないか聞いてみるよ」
ユニット相手探しに引き続きこちらも人探しという結果に収まった。妥当なところではあるが足踏み感が否めない。この間に奴と桜庭が何かしていると考えると気が気でならない。
そう思ったが足踏みしているのは俺と妹だけだったようで、俺の周囲は目まぐるしく動いているようであった。それを伝えてくれたのは修行場に顔を出した堂島さんである。堂島さんは疲れた顔をしており、スーツもどこかくたびれたようであった。
「少しいいか。二人ともすぐに旅館に戻ってくれないか。三刀さんに会いたいって人がいる」
「それは構いませんが……ここで会いたい人ってどなたですか?」と尋ねるのは北御門。
「電脳科学庁お抱えの技術者だ」
俺らとは俺と北御門のことである。
俺らは旅館の裏にある山にいた。
新緑が生い茂る山の中に拓けた場所があった。そこはこの地に拠点を置く退魔組織の修行場として使われている場所であった。もっとも、近代化が進んだ今ではこの場所はほとんど使われることはなくなり、俺ら以外に誰も見当たらない。裏を返せば余所者である北御門に貸しても誰からも文句が出ない場所であった。
そこで俺は切り株に腰掛け、真剣を持った北御門を眺めていた。
「僕たち退魔師は大きく分けて三通りの方法で霊的存在と対峙するんだ」
そう言って刀を構える。その刀身はほんのりとした光を帯びていた。
「僕は道具を使って対峙する流派。今の退魔師のほとんどはこれに分類されるかな。今見せてる刀も光ってるでしょ? これは刀に霊気を込めてるんだ」
霊気というのは初めて聞く概念であったが、北御門がそのまま続きを話そうとするので質問は後回しにした。おそらく心とか魂とかそこらへんの用語を言い換えたものだろう。そう当たりをつけた。
「もう一つは使い魔を駆使すること。霊的存在と契約を結んで力を貸してもらう形式だね。ただ最近はなり手が少なくなってて代々そういうものと契約してる一族しかいなくなってるのが現状かな。もう一つは絶滅してるようなものだけど、霊力そのもので戦う人だね。メリットがないわけではないけど、デメリットが多すぎるからわざわざこれで戦う人なんていないかな」
三つの内容を聞いて自分にどれが当てはまるのかを考える。
「俺はゲーム内の武器を使ってるから、道具を使うものか?」
そう問うも北御門は渋い顔をする。
「それでいうと全部ってなっちゃうかなぁ」
「どういうことだ?」
「ゲーム内の武器を使う行為は道具を使う流派。半神と契約して戦えるようになった行為は使い魔みたいなものだし、霊力で身を守るなんて行為はまさにそのもので戦う行為だからなぁ」
「聞きそびれてたが霊力ってなんなんだ」
「流派によって言い方とか考え方とかまちまちなんだけど僕は概念に与える影響力って考えかな。幽霊とかが見えるだけの人とかは概念を捉えるだけの力って意味で考えてる。ちなみにアンジェラさんはなんて言ってたのか気になるな」
「魂とか心とかそういう風に言ってたな」
俺自身あまり詳しくは思い出せずそう曖昧に答えた。
すると北御門が「それほんと?」と苦笑する。
「たしかそう言ってたぐらいだからそこまでアテにならないぞ」
「いやでもそうだとすると三刀さんの戦い方とかがああなるのも納得かなぁ」
「一人で納得してくれないで教えてくれないか」
「ごめんね。まさか本当に使ってる人がいるなんて思わなくて驚いたんだ」
北御門は刀を鞘にしまい、言った。
「開闢の鬼道。神をも殺す鬼の力だよ」
「鬼の力って……俺は単なる人間だぞ」
そう返すと北御門は「大昔の人の比喩だから細かいことは気にしないで」と元も子もないことで返してくる。
「この場合の鬼っていうのは人ならざる力と精神性を持った人の例えかな。開闢の鬼道っていうのは、地獄を作り上げる鬼神に至った人を指した言葉だよ」
「地獄を作り上げるっていうと閻魔大王とかか?」
「あの人は地獄の管理と死者がどこへ送られるかの選別がメイン業務だから違うかなぁ。そもそも地獄ってどうやってできたのかわからなすぎる部分があるんだ」
「樹神さんも知らないのか?」
「比較的に新しい神になるからね。そのあたりの事情を知っているのは最低でも邪馬台国とか四大文明が起こる頃にいた神様じゃないとわからないんじゃないかなぁ」
「そりゃ気が遠くなる話だな」
「ま、僕たちはそんな昔の話は置いとこうよ。問題はそんな力を持った人なんていないからどう修行をつけていいかわからない点かな。アンジェラさんから力を使う時にコツとか聞かなかったの?」
「いくつかあったな」
「例えば?」
心なしか北御門の目が輝いているように思えた。おそらく他流派の話を聞く機会は珍しいからワクワクするものなのだろう。俺自身もシオミンが他アイドルとの共演する際に、そのファンの方々と交流する機会があったりするのだが、アイドルの気質による応援の仕方の変化やユニットを組んでいる場合の掛け声の合わせ方など独自メソッドがあったりするから学びになることが多い。
「武器を使う際は心を込めるようにとか言われたな」
「なるほど。そこら辺は似たような感じかな」
「他には強い心を持てとかもあったな」
「呪術に対抗するための何かかな。具体的にどんなことを指してるのかわかったりするかい?」
こういうとアンジェラが誤解されるのではないかと逡巡したもののアンジェラがこういったのだから俺は間違ってないと自分に言い聞かせる。
「野郎ぶっ殺すの精神」
北御門は腕を組み、上を向いたり、下を向いたり、難しい顔をしたりする。
「思ったより精神性しかなくて驚いたよ」
「けどわかりやすいだろう?」
「ごめんだけど、僕にはわかりにくかったかな」
こんなにわかりやすいものなのに何故わからないのだろうか。もしかすると北御門は友人が多いから人を殺したいと思ったことがないのかもしれないなと思った。ただそうなると開闢の鬼道というものは、神殺しの鬼の力とか言われているがボッチの力になってしまう。俺もアンジェラも友人が少ないので概ね間違っていなさそうなのが余計に辛い。
「んーわからないとなると、しばらくは基礎練習がメインかな。そこらへんなら他流派の僕でもつけられるだろうし。本格的な修行は会長か西野さんあたりに誰かいい人いないか聞いてみるよ」
ユニット相手探しに引き続きこちらも人探しという結果に収まった。妥当なところではあるが足踏み感が否めない。この間に奴と桜庭が何かしていると考えると気が気でならない。
そう思ったが足踏みしているのは俺と妹だけだったようで、俺の周囲は目まぐるしく動いているようであった。それを伝えてくれたのは修行場に顔を出した堂島さんである。堂島さんは疲れた顔をしており、スーツもどこかくたびれたようであった。
「少しいいか。二人ともすぐに旅館に戻ってくれないか。三刀さんに会いたいって人がいる」
「それは構いませんが……ここで会いたい人ってどなたですか?」と尋ねるのは北御門。
「電脳科学庁お抱えの技術者だ」
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