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6章 一転
目立ってなんぼの神様業
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桜庭が行方不明になった理由について、二つ予想できた。
一つは桜庭自身がマスコミからの追求を避けるために姿をくらました。プロゲーマーとしての説明責任が桜庭にはあった。戦場でいきなり方針転換はいかがなものなのか、俺が内通していたのはどうやって知ったのか、もう一体のエネミーは味方なのか、ならアレは一体なんなのか、など湧き出る質問に対応しなければならなくなる。姿をくらましてしまった方が楽なのだろう。
もう一つは、あの白いエネミーである模倣犯に危害を加えられた可能性だ。桜庭もあの小憎らしい模倣犯に騙されたあげく、用済みになり処理された可能性がある。ただし、その場合はマスコミなどの関係各所に俺の住所をリークするという七面倒なことをしてから処理されたことになる。
親友だった者としてはせめて生きていて欲しいが、あまり期待しない方がいいのかもしれない。未だに桜庭に与えられた胸の痛みが残っているのにアイツの心配をするなんて、俺もつくづく甘い。
「舞香、携帯の中に移動しろ。樹神さんについていく」
「それは構わないんだけど、あの窓どうするの? てかこのまんまだとアンチが自宅に押し寄せて大変なことすると思うよ」
妹の指摘の通りであった。アンチな上に集団心理もあって、正義の免罪符が掲げられる状況だと、この狭い我が居城はひとたまりもないだろう。部屋は荒らされ、シオミングッズは踏みにじられ、他の部屋の方々に迷惑をかけ、最悪火すら放たれる可能性すらある。
どうするべきか悩んでいると窓の向こう側で待機していた樹神さんが「準備終わった?」と呼びかけてきた。
「準備は終わりましたが、この部屋をこのままにしておくにもいかないなと思いまして」
「あー心配せんでえーよ。あとは警察と天樹会がなんとかしはるから」
樹神さん曰く、あとで同意を取ろうとしていたらしいが元々この部屋に住み続けるのは無理だろうと判断していたらしい。ゆえに警察に警護してもらいながら天樹会が引っ越し作業をするつもりだったらしい。引っ越し先は後日相談だが荷物はひとまず天樹会の倉庫に置いておくことになるという。
「てなわけやから、はよ行こか」
妹が携帯に移ったのを確認し、パソコンの電源を落とし、外に出る。
窓が割れているので必要かどうか怪しいが一応鍵をかけた。
階段を降り、アパートの駐車場に向かうと沢山のシャッター音と光に出迎えられた。
マスコミである。
妹が言っていた通り、警察に押しやられアパートの敷地外に退去させられていた。人通りの少ない公道を一群が占拠し、集団でカメラをこちらに向けている。今頃ネット上ではなんと書かれているのやら。妹に作ってもらったアバターがイケメンだったのに、リアルの情けない姿を見られてしまってはあのアバターに申し訳ない。そんな見た目だったら大人しく量産型アバターを使い続けろ、とでも書かれていそうな気がする。
あまりカメラに映りたくない思いが前に出て、片手で顔を隠す。ネットで身バレ防止するために目元を隠す裏垢女子みたいな映り方になっていそうだ。逆にいかがわしいことをしているように錯覚させてしまう俺とは対照的に樹神さんは堂々としていた。
「見てみい。芸能人でも今時ここまでここまで集まらへんで。マスコミバックにして記念写真でも撮りたいわぁ」と言っては携帯のカメラをマスコミに向けていた。
おそらくこの映像を見ている人たちは、明らかに警察ではないこの明るいグラデーションカラーの髪をした美人は誰なんだろうと思っているだろう。野郎にとっては俺のリアルの姿よりもそちらの方が大事だろう。
というかこの人はこんなに目立っていいのだろうか。
そんな思いを込めた視線を樹神さんは受け取ったのか白い歯を見せられる。
「ウチが目立つことに意味があるんや。国内外のお偉いさんでウチの存在を知っとる奴はこれでどういう案件か理解できるやろ」
なるほどと思った。
一つは桜庭自身がマスコミからの追求を避けるために姿をくらました。プロゲーマーとしての説明責任が桜庭にはあった。戦場でいきなり方針転換はいかがなものなのか、俺が内通していたのはどうやって知ったのか、もう一体のエネミーは味方なのか、ならアレは一体なんなのか、など湧き出る質問に対応しなければならなくなる。姿をくらましてしまった方が楽なのだろう。
もう一つは、あの白いエネミーである模倣犯に危害を加えられた可能性だ。桜庭もあの小憎らしい模倣犯に騙されたあげく、用済みになり処理された可能性がある。ただし、その場合はマスコミなどの関係各所に俺の住所をリークするという七面倒なことをしてから処理されたことになる。
親友だった者としてはせめて生きていて欲しいが、あまり期待しない方がいいのかもしれない。未だに桜庭に与えられた胸の痛みが残っているのにアイツの心配をするなんて、俺もつくづく甘い。
「舞香、携帯の中に移動しろ。樹神さんについていく」
「それは構わないんだけど、あの窓どうするの? てかこのまんまだとアンチが自宅に押し寄せて大変なことすると思うよ」
妹の指摘の通りであった。アンチな上に集団心理もあって、正義の免罪符が掲げられる状況だと、この狭い我が居城はひとたまりもないだろう。部屋は荒らされ、シオミングッズは踏みにじられ、他の部屋の方々に迷惑をかけ、最悪火すら放たれる可能性すらある。
どうするべきか悩んでいると窓の向こう側で待機していた樹神さんが「準備終わった?」と呼びかけてきた。
「準備は終わりましたが、この部屋をこのままにしておくにもいかないなと思いまして」
「あー心配せんでえーよ。あとは警察と天樹会がなんとかしはるから」
樹神さん曰く、あとで同意を取ろうとしていたらしいが元々この部屋に住み続けるのは無理だろうと判断していたらしい。ゆえに警察に警護してもらいながら天樹会が引っ越し作業をするつもりだったらしい。引っ越し先は後日相談だが荷物はひとまず天樹会の倉庫に置いておくことになるという。
「てなわけやから、はよ行こか」
妹が携帯に移ったのを確認し、パソコンの電源を落とし、外に出る。
窓が割れているので必要かどうか怪しいが一応鍵をかけた。
階段を降り、アパートの駐車場に向かうと沢山のシャッター音と光に出迎えられた。
マスコミである。
妹が言っていた通り、警察に押しやられアパートの敷地外に退去させられていた。人通りの少ない公道を一群が占拠し、集団でカメラをこちらに向けている。今頃ネット上ではなんと書かれているのやら。妹に作ってもらったアバターがイケメンだったのに、リアルの情けない姿を見られてしまってはあのアバターに申し訳ない。そんな見た目だったら大人しく量産型アバターを使い続けろ、とでも書かれていそうな気がする。
あまりカメラに映りたくない思いが前に出て、片手で顔を隠す。ネットで身バレ防止するために目元を隠す裏垢女子みたいな映り方になっていそうだ。逆にいかがわしいことをしているように錯覚させてしまう俺とは対照的に樹神さんは堂々としていた。
「見てみい。芸能人でも今時ここまでここまで集まらへんで。マスコミバックにして記念写真でも撮りたいわぁ」と言っては携帯のカメラをマスコミに向けていた。
おそらくこの映像を見ている人たちは、明らかに警察ではないこの明るいグラデーションカラーの髪をした美人は誰なんだろうと思っているだろう。野郎にとっては俺のリアルの姿よりもそちらの方が大事だろう。
というかこの人はこんなに目立っていいのだろうか。
そんな思いを込めた視線を樹神さんは受け取ったのか白い歯を見せられる。
「ウチが目立つことに意味があるんや。国内外のお偉いさんでウチの存在を知っとる奴はこれでどういう案件か理解できるやろ」
なるほどと思った。
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