妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗

文字の大きさ
上 下
95 / 229
5章 平等な戦い

投げ打ってでも勝ち取らねばならないもの

しおりを挟む
 桜庭が出した指示により、アンジェラは防戦一方となっていた。

 白いエネミーである模倣犯がアンジェラを責め立てる。隙をみて反撃に転じようとしても、周囲のプレイヤーがアンジェラに攻撃し、それを許さない。さらに不利な条件としてアンジェラは対等な立場での戦闘を望んだ。ゆえにプレイヤーの攻撃によるダメージが通る。だが相対する模倣犯はプレイヤーからの流れ弾に当たってもダメージが通っていないようだった。

 白と黒のエネミー同士の争いとそれを支援するプレイヤーは、まるで悪魔を討伐するために遣わされた天使と勇士のようであった。

 この光景が全国放送されている。

 黒のエネミーは、アンジェラは、大衆の目には悪者のように映っているだろう。

 今からアンジェラを助けに入る。

 ここから先は引き返せない。

 ポイントオブノーリターンだ。

 俺は今から民意の敵になる。

 障害物に隠れながら、素早く進む。

 アンジェラを攻撃するプレイヤーの背後へ向かって。

 だだっ広い広場と言えど、アンジェラと模倣犯が戦っているのは上空であり、下方向への注意は散漫になっていた。

 ゆえに気付かれずその視界に映ることなく移動が完了する。。

 プレイヤーまでは約十歩ほどの距離。

 俺は叫ぶ。

「アンジェラ! 作戦開始だ!」

 そして、プレイヤーに向かって駆ける。

 片手に高周波ブレードを携えて。

 プレイヤーが俺の存在に気付き、振り返る。銃を構える。互いにダメージを与えられないものだと理解していても、それは長年の経験に基づいた反射的行動であった。

 発砲。

 乾いた音が俺に触れる。

 ダメージはない。

 そのまま突き進み、高周波ブレードを振りかぶる。

 無駄だと言わんばかりの笑みをしたソイツに向かって振り下ろす。

 高周波ブレードが切り裂く音、ダメージエフェクトとしての血、そしてダメージ表記が現れる。即死のそれであった。

 ソイツは信じられない顔を残し、死亡後に現れるアイテムボックスに姿を変えた。

「悪いな。もうなりふり構わってられなくなったんだ」

 聞こえていないだろうソイツに言った。

 アンジェラと予め決めておいた作戦。それは俺の攻撃だけ味方へのフレンドリーファイアを許可するように設定変更すること。プレイヤーとあの白のエネミー問わず、正々堂々と戦いたいアンジェラにとって、俺が攻撃を加えられるようにすることが最大限の譲歩であった。

 俺がプレイヤーを狩り、アンジェラが作戦に集中できるようにすること。これが作戦であり、俺が裏切り者に映る最終手段であった。

 次の標的に向かって走り出す。

 事前に各自の攻撃位置は頭に入れておいた。あとはそこへ向かい、殺るだけ。それを繰り返し、アンジェラに有利な状況を作っていく。一人、また一人狩る。キルログが流れ、俺がプレイヤーを狩っていることに気付く奴が増えていく。反撃を試みてみる者、持ち場を離れて逃げ出した者、命乞いをする者、理由を問う者、様々な態度で出迎えられた。

 逃げ出した者以外は残さず殺し、ゲーム外へと退去させた。

 戦場から銃声は止み、エネミー同士が殺し合うだけの場となった。

 あとは模倣犯を打倒する。それだけだった。

 白と黒のエネミー同士がやり合う戦場。

 そこへ続く一本道にそいつはいた。

「よう、親友。チートに手を染めるのはどうなんだ」

「お前こそ無暗に力を求める姿勢はどうかと思うぞ」

 桜庭|《親友》が立ちはだかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。 しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。 そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。 このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。 しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。 妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。 それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。 それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。 彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。 だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。 そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。

人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚

咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。 帝国歴515年。サナリア歴3年。 新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。 アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。 だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。 当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。 命令の中身。 それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。 出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。 それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。 フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。 彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。 そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。 しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。 西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。 アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。 偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。 他サイトにも書いています。 こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。 小説だけを読める形にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり
ファンタジー
書籍化決定しました! 刊行は3月中旬頃です。 ☆第17回ファンタジー小説大賞で【癒し系ほっこり賞】を受賞☆ (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です) ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様でも公開しております。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

処理中です...