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5章 平等な戦い
アンチのアンチ
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駆けた。
アンジェラのいる方向へ。
襲い掛かるは敵の波。
数多の能力が行くてを阻む。
地面がぬかるみ、煙幕が視界を遮り、瞬間移動してきた敵が取り押さえようとしてくる。
逃げに徹し、捕まりそうになる度にシールドを生成し、難を逃れる。その度に生成に必要なエネルギーを消費し、五分も過ぎる頃には残量は底をついた。
それは逃げる手段がなくなることを示していた。
プロゲーマーに囲まれる。
少し離れた先でエネミー同士が戦闘している様子が見えるぐらいに近い。
プロゲーマーは勝ち誇った顔で口々に言う。
「英雄つってもこんなもんか」
「いやいやむしろ善戦しただろ。俺ならここまで逃げられねえよ」
「でもダメージを与えられない縛り付きだからなぁ」
もう逃げられないと確信し、好き勝手に言う。
事実、もう逃げる手段がなかった。
十数人のプロゲーマーは、俺から数メートルほど距離を取って取り囲んでいる。俺が何か悪足搔きをしても、対応できる距離にいる。今の俺に何ができるわけでもないが、それでも彼らは軽口を叩いても警戒だけは怠らない。
桜庭が追いつき、俺の前に立つ。
「よう、親友。悪いが向こうが決着つくまで大人しくして貰うぞ」
「こんな状況でも親友って呼んでくれるのか。嬉しいな」
「俺とお前の仲だろ。殺さなきゃいけない状況になっても呼び続けてやるよ」
「やっぱ頭いかれてるな、お前」
逃げ出せる手段がない以上、ここに釘付けにされる。こうなってはアンジェラが一人でプロゲーマーとあの模倣犯を相手にして生き延びなければならない。
いや、桜庭がいる以上、アンジェラは不利になる。
やはり無理矢理突破する他ない。
タイミングを図ろうと周囲に気を配る。
その中で一人桜庭に近づく奴がいた。
「サクラバさんさぁ、こうして逃げられなくなった状況を作ったんだから何が起こっているか教えてくれね?」
肩を組んでくるそいつを桜庭は払いのける。
「悪いな。非科学的なことが多いせいで今説明しても信じてもらえそうにないんだ」
「そっか」
そいつは言う。
「ならお前も信じられねえな!」
そいつの体から煙幕が噴き出て、辺り一面を覆う。
その場にいる全員の視界が奪われ、何も見えないなか誰かが俺に触れる。そいつは耳元で「逃げるぞ」と言った。
次の瞬間、浮遊感に襲われる。
俺は空の上にいた。
その次の瞬間にはビルの上に。
さらに次の瞬間にはとある丘の上にいた。
その位置はエネミー同士の戦闘が見下ろせる位置であった。
「もう運べない。あとは自力で逃げてくれ」
瞬間移動の能力者はそう言った。煙幕を出した人物とは別人であった。
「俺を助けていいのか?」
そいつに問うと、くしゃくしゃな笑顔をされた。
「二人とも俺らが知らない情報持ってんだろうけど、孤高の人とか言われてお高く止まってる奴よりもアンチに叩かれまくってでも作戦に参加したアンタを信用する」
まさかアンチに叩かれまくったことがここに来て活きてくることになろうとは。
「助かった。それじゃ行ってくる」
再び走り出す。
後ろから見送りの声が届く。
「煙幕出した奴さー! 妹さんのファンだからそのうち会わせてやってくれー!」
あの煙幕、出撃準備室で妹を紹介してくれと言った奴だったのか。
俺が無事だったのならば、いずれ機会を作ってあげよう。
そして、舞台はエネミー同士、プロゲーマーがそれを討伐しようとひしめき合う戦場に移り変わる。
アンジェラのいる方向へ。
襲い掛かるは敵の波。
数多の能力が行くてを阻む。
地面がぬかるみ、煙幕が視界を遮り、瞬間移動してきた敵が取り押さえようとしてくる。
逃げに徹し、捕まりそうになる度にシールドを生成し、難を逃れる。その度に生成に必要なエネルギーを消費し、五分も過ぎる頃には残量は底をついた。
それは逃げる手段がなくなることを示していた。
プロゲーマーに囲まれる。
少し離れた先でエネミー同士が戦闘している様子が見えるぐらいに近い。
プロゲーマーは勝ち誇った顔で口々に言う。
「英雄つってもこんなもんか」
「いやいやむしろ善戦しただろ。俺ならここまで逃げられねえよ」
「でもダメージを与えられない縛り付きだからなぁ」
もう逃げられないと確信し、好き勝手に言う。
事実、もう逃げる手段がなかった。
十数人のプロゲーマーは、俺から数メートルほど距離を取って取り囲んでいる。俺が何か悪足搔きをしても、対応できる距離にいる。今の俺に何ができるわけでもないが、それでも彼らは軽口を叩いても警戒だけは怠らない。
桜庭が追いつき、俺の前に立つ。
「よう、親友。悪いが向こうが決着つくまで大人しくして貰うぞ」
「こんな状況でも親友って呼んでくれるのか。嬉しいな」
「俺とお前の仲だろ。殺さなきゃいけない状況になっても呼び続けてやるよ」
「やっぱ頭いかれてるな、お前」
逃げ出せる手段がない以上、ここに釘付けにされる。こうなってはアンジェラが一人でプロゲーマーとあの模倣犯を相手にして生き延びなければならない。
いや、桜庭がいる以上、アンジェラは不利になる。
やはり無理矢理突破する他ない。
タイミングを図ろうと周囲に気を配る。
その中で一人桜庭に近づく奴がいた。
「サクラバさんさぁ、こうして逃げられなくなった状況を作ったんだから何が起こっているか教えてくれね?」
肩を組んでくるそいつを桜庭は払いのける。
「悪いな。非科学的なことが多いせいで今説明しても信じてもらえそうにないんだ」
「そっか」
そいつは言う。
「ならお前も信じられねえな!」
そいつの体から煙幕が噴き出て、辺り一面を覆う。
その場にいる全員の視界が奪われ、何も見えないなか誰かが俺に触れる。そいつは耳元で「逃げるぞ」と言った。
次の瞬間、浮遊感に襲われる。
俺は空の上にいた。
その次の瞬間にはビルの上に。
さらに次の瞬間にはとある丘の上にいた。
その位置はエネミー同士の戦闘が見下ろせる位置であった。
「もう運べない。あとは自力で逃げてくれ」
瞬間移動の能力者はそう言った。煙幕を出した人物とは別人であった。
「俺を助けていいのか?」
そいつに問うと、くしゃくしゃな笑顔をされた。
「二人とも俺らが知らない情報持ってんだろうけど、孤高の人とか言われてお高く止まってる奴よりもアンチに叩かれまくってでも作戦に参加したアンタを信用する」
まさかアンチに叩かれまくったことがここに来て活きてくることになろうとは。
「助かった。それじゃ行ってくる」
再び走り出す。
後ろから見送りの声が届く。
「煙幕出した奴さー! 妹さんのファンだからそのうち会わせてやってくれー!」
あの煙幕、出撃準備室で妹を紹介してくれと言った奴だったのか。
俺が無事だったのならば、いずれ機会を作ってあげよう。
そして、舞台はエネミー同士、プロゲーマーがそれを討伐しようとひしめき合う戦場に移り変わる。
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