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5章 平等な戦い
決戦直前
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出撃準備室に入ると既に多くの作戦参加者が集まっていた。俺でも知っている名のあるプレイヤーもいれば、野良で活躍している実力派もいるらしい。実力的には場違いも甚だしい俺がログインしたことで視線が集まる。頭を下げ、そそくさと隅っこに移動しようとした。
「おー! 英雄が来たぞ!」
その掛け声でわらわらと集まったそいつらはで俺のことを取り囲んできやがった。
俺が総指揮を執ることが気に入らず、文句でも言いに来たのかと身構えるも雰囲気が考えていたものとは違った。アンチが持つとげとげしい感じはなく、手荒くはあるのだが、むしろ親愛を込めた何かに感じた。
そいつらは口々に好き勝手言う。
「お前最初戦った時よく生き残ったな」
「俺でもやられたってのによく勝てたな」
「アバター変えたんだろ? 俺は量産型の方が硬派で好きだったなー」
「妹紹介して」
などなど返答を待たずに好き勝手に投げ込んでくるもんだから、俺はオーバーフローして固まる。
そうしていると「ちょっと通してくれ!」と聞き馴染みのある声がした。人混みを掻きわけて進むのは細身で目が切れ長のイケメン社長然とした風貌の男であった。つまりは桜庭である。
「こいつコミュ障だからそんな虐めないでやってくれ」
「誰がコミュ障だ」
「お前以外にいないだろ」
「お前も似たようなもんだろ」
そんな掛け合い漫才していたら周囲から笑いが漏れる。
「孤高とか言われてる奴もリアル知ってる奴からすると形無しだな」
爆笑が巻き起こる。腹を抱える奴や大口を空けて苦しそうにする奴、皆それぞれ好き勝手に桜庭を笑い者にした。
笑いが収まった頃を見計らって桜庭は俺に言う。
「こいつら馬鹿だし口も悪いが気はいいやつらばっかだ。心配すんな」
桜庭の言う通り、悪い奴等ではないのだろう。初対面なのに肩に手を回してきたり、俺の反応を見ずにネタにしたり、荒いコミュニケーションの仕方であるが悪い雰囲気はなかった。空気が読めない「妹を紹介しろ」なんてものも身内ネタみたいなものなのだろう。周囲からボコボコにされているのも荒い肉体的コミュニケーションだと思えばそう見えなくはない。
少しして参加者全員が揃う。
演説が慣れていない俺に代わり桜庭が作戦を再度確認する。
今回は特別ルールによりアイテムを拾う必要はなく、事前に申請したアイテムを初めから所持している状態で始まる。ゆえに降りる場所は同じで問題なく、近接戦闘に対し有利に戦える高低差と障害物の多い地形である街を模したマップ。
フレンドリーファイアによる体力減少はないが、ヒット判定はあるので怯みが起きる。射線上に仲間がいないことが望ましい。
エネミーが現れたあとは戦闘が発生した場所によって適宜、戦闘方法を変える。だが基本は高台を取り、囲んで下に向かって撃つこと。
一通りの説明を終え、あとは戦闘開始を待つだけになる。
エネミーに対する意気込みを語ったり、あと少し待てばアップデートで能力の組み合わせができるようになるのにと突発作戦の至らなさを指摘したり、デバッグ機能で無敵化とか使えないのかななどと真正面から戦うことの意義を唱えたものもいた。
指摘できないが、それはアンジェラが許さないだろう。
アンジェラが望むのは真正面からの戦いであって、チートはそれから逸れる。記憶を奪うことに対する矜持なのだろう。そもそもチートを使ったところで、アンジェラはシステムを改竄できるから無意味であろう。毒を以て毒を制すみたいなものだ。
問題は禁忌を破ったアイツも同じことができてしまうことだ。
ゆえにアンジェラとアイツが現れた時の作戦を一つ決めていた。
アイツが現れた時、そこからが本当の作戦の始まりとなる。
「……時間だな」
カウントダウンが始まった。
「おー! 英雄が来たぞ!」
その掛け声でわらわらと集まったそいつらはで俺のことを取り囲んできやがった。
俺が総指揮を執ることが気に入らず、文句でも言いに来たのかと身構えるも雰囲気が考えていたものとは違った。アンチが持つとげとげしい感じはなく、手荒くはあるのだが、むしろ親愛を込めた何かに感じた。
そいつらは口々に好き勝手言う。
「お前最初戦った時よく生き残ったな」
「俺でもやられたってのによく勝てたな」
「アバター変えたんだろ? 俺は量産型の方が硬派で好きだったなー」
「妹紹介して」
などなど返答を待たずに好き勝手に投げ込んでくるもんだから、俺はオーバーフローして固まる。
そうしていると「ちょっと通してくれ!」と聞き馴染みのある声がした。人混みを掻きわけて進むのは細身で目が切れ長のイケメン社長然とした風貌の男であった。つまりは桜庭である。
「こいつコミュ障だからそんな虐めないでやってくれ」
「誰がコミュ障だ」
「お前以外にいないだろ」
「お前も似たようなもんだろ」
そんな掛け合い漫才していたら周囲から笑いが漏れる。
「孤高とか言われてる奴もリアル知ってる奴からすると形無しだな」
爆笑が巻き起こる。腹を抱える奴や大口を空けて苦しそうにする奴、皆それぞれ好き勝手に桜庭を笑い者にした。
笑いが収まった頃を見計らって桜庭は俺に言う。
「こいつら馬鹿だし口も悪いが気はいいやつらばっかだ。心配すんな」
桜庭の言う通り、悪い奴等ではないのだろう。初対面なのに肩に手を回してきたり、俺の反応を見ずにネタにしたり、荒いコミュニケーションの仕方であるが悪い雰囲気はなかった。空気が読めない「妹を紹介しろ」なんてものも身内ネタみたいなものなのだろう。周囲からボコボコにされているのも荒い肉体的コミュニケーションだと思えばそう見えなくはない。
少しして参加者全員が揃う。
演説が慣れていない俺に代わり桜庭が作戦を再度確認する。
今回は特別ルールによりアイテムを拾う必要はなく、事前に申請したアイテムを初めから所持している状態で始まる。ゆえに降りる場所は同じで問題なく、近接戦闘に対し有利に戦える高低差と障害物の多い地形である街を模したマップ。
フレンドリーファイアによる体力減少はないが、ヒット判定はあるので怯みが起きる。射線上に仲間がいないことが望ましい。
エネミーが現れたあとは戦闘が発生した場所によって適宜、戦闘方法を変える。だが基本は高台を取り、囲んで下に向かって撃つこと。
一通りの説明を終え、あとは戦闘開始を待つだけになる。
エネミーに対する意気込みを語ったり、あと少し待てばアップデートで能力の組み合わせができるようになるのにと突発作戦の至らなさを指摘したり、デバッグ機能で無敵化とか使えないのかななどと真正面から戦うことの意義を唱えたものもいた。
指摘できないが、それはアンジェラが許さないだろう。
アンジェラが望むのは真正面からの戦いであって、チートはそれから逸れる。記憶を奪うことに対する矜持なのだろう。そもそもチートを使ったところで、アンジェラはシステムを改竄できるから無意味であろう。毒を以て毒を制すみたいなものだ。
問題は禁忌を破ったアイツも同じことができてしまうことだ。
ゆえにアンジェラとアイツが現れた時の作戦を一つ決めていた。
アイツが現れた時、そこからが本当の作戦の始まりとなる。
「……時間だな」
カウントダウンが始まった。
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