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5章 平等な戦い
英雄は逃げることを許されない
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番組のエネミー特集が終わると妹が「ねえ見てよこれ」と今発表された内容に関するネットの反響を見せてくる。
そこには「国が匙を投げた」「国家総動員法発令」「漫画に出てくる賞金首みたい」「プロゲーマー実質徴兵令じゃん」などと国に対する批判が多く投げられていた。中には矢面に立っている桜庭に対し、心無い言葉が投げられているものもあった。
「国も桜庭も大変だな」
そう感想を述べたところで妹に「そっちも大変だけどにーちゃんも大変なんだけど」と言われる。
妹が俺に関する情報だけをピックアップしたものだけを見せてくる。
先程のニュースで俺の安否が不明ということが知れ渡ったことで、俺のアンチ共は大喜びしたらしく界隈で祭りが始まっていた。俺の記憶喪失説や意識不明説、ともかく俺が敗北したことが嬉しいらしく、それをおかずに白米食べれるなどウィットに富んだ罵詈雑言の雨あられであった。
そういう意見もある一方、俺を擁護する声もちらほら見えた。エネミーに狙われていることを知りながら、囮となったことを評価していた。また、ついに量産型アバターからの脱却ができたことにより量産型アバター狩りが行われなくなるといった点での評価があった。それが飛躍して「本人は量産型アバターを手放すことを望んでいないのに下々を守るために止む無く手放した」という感動ストーリーに仕立てる言説が生まれた。陰謀論が流行るようにそれを真に受けた純真からファンを通り越して信者になる者も現れた。
頭がいかれている。
信者がいれば強烈なアンチもいるのはアイドル界隈で知っていたが、まさかその逆もまた然りとなるとは。
「もはやにーちゃんが神になった方がいいんじゃない?」
妹が冗談めかして訊いてくる。
「俺が神になったらこんな世界滅ぼしてやるよ」
「お人好しだから無理でしょ」
笑顔で否定をかまされた。それを否定してやりたかったが、妹が増長した原因の一端は俺が甘やかしすぎたというのもあって強く否定出来なかった。
話題を変えるべく生放送を終えた桜庭に電話を掛ける。
桜庭はわずかワンコールで電話に出る。
少し気持ち悪さを感じた。
「おい、大丈夫か? 俺のことは覚えてるよな?」
けれど俺を心配してのことだったので口には出さないでおく。
「覚えているし、無事だ」
「それはなにより。三回目の正直で、お前の命運もここまでかと思ったぞ」
一度目はバトルロワイアル、二度目はショッピングモール、三度目は今回のことだろう。二度目は模倣犯の敵情視察で、三度目はアンジェラが味方についてくれたおかげもあり、綱渡りは一度目のみである。
「殺しても死なない奴みたいだからな」
「なんだ生放送見てたのか。イケメンだったろ?」
「胡散臭い実業家にしか見えなかったな」
「なんだとこの野郎」
いつも通りのやり取りを終えて、本題に入る。
「エネミー討伐作戦ってどういうことだ?」
「国のお偉いさんが決めたらしい。俺も寝耳に水で驚いた」
「プロゲーマーは全員参加なのか?」
「さすがに個人勢までは強制できないが、スポンサー契約してる奴らは軒並み参加することになると思うな。無論、国からはえぐいぐらい金が出る。あとは自衛隊とかでゲームが得意な奴等が参加することになりそうだ」
「なるほどな。命を掛けるに足る金が出るのは救いだな」
桜庭は少し間を空ける。
「お前、なに他人事みたいに言ってるんだ?」
意図が分からず今度は俺が黙る番になる。
「お前は強制参加だ」
寝起きでアンジェラに馬乗りされていたことより訳が分からなかった。
そこには「国が匙を投げた」「国家総動員法発令」「漫画に出てくる賞金首みたい」「プロゲーマー実質徴兵令じゃん」などと国に対する批判が多く投げられていた。中には矢面に立っている桜庭に対し、心無い言葉が投げられているものもあった。
「国も桜庭も大変だな」
そう感想を述べたところで妹に「そっちも大変だけどにーちゃんも大変なんだけど」と言われる。
妹が俺に関する情報だけをピックアップしたものだけを見せてくる。
先程のニュースで俺の安否が不明ということが知れ渡ったことで、俺のアンチ共は大喜びしたらしく界隈で祭りが始まっていた。俺の記憶喪失説や意識不明説、ともかく俺が敗北したことが嬉しいらしく、それをおかずに白米食べれるなどウィットに富んだ罵詈雑言の雨あられであった。
そういう意見もある一方、俺を擁護する声もちらほら見えた。エネミーに狙われていることを知りながら、囮となったことを評価していた。また、ついに量産型アバターからの脱却ができたことにより量産型アバター狩りが行われなくなるといった点での評価があった。それが飛躍して「本人は量産型アバターを手放すことを望んでいないのに下々を守るために止む無く手放した」という感動ストーリーに仕立てる言説が生まれた。陰謀論が流行るようにそれを真に受けた純真からファンを通り越して信者になる者も現れた。
頭がいかれている。
信者がいれば強烈なアンチもいるのはアイドル界隈で知っていたが、まさかその逆もまた然りとなるとは。
「もはやにーちゃんが神になった方がいいんじゃない?」
妹が冗談めかして訊いてくる。
「俺が神になったらこんな世界滅ぼしてやるよ」
「お人好しだから無理でしょ」
笑顔で否定をかまされた。それを否定してやりたかったが、妹が増長した原因の一端は俺が甘やかしすぎたというのもあって強く否定出来なかった。
話題を変えるべく生放送を終えた桜庭に電話を掛ける。
桜庭はわずかワンコールで電話に出る。
少し気持ち悪さを感じた。
「おい、大丈夫か? 俺のことは覚えてるよな?」
けれど俺を心配してのことだったので口には出さないでおく。
「覚えているし、無事だ」
「それはなにより。三回目の正直で、お前の命運もここまでかと思ったぞ」
一度目はバトルロワイアル、二度目はショッピングモール、三度目は今回のことだろう。二度目は模倣犯の敵情視察で、三度目はアンジェラが味方についてくれたおかげもあり、綱渡りは一度目のみである。
「殺しても死なない奴みたいだからな」
「なんだ生放送見てたのか。イケメンだったろ?」
「胡散臭い実業家にしか見えなかったな」
「なんだとこの野郎」
いつも通りのやり取りを終えて、本題に入る。
「エネミー討伐作戦ってどういうことだ?」
「国のお偉いさんが決めたらしい。俺も寝耳に水で驚いた」
「プロゲーマーは全員参加なのか?」
「さすがに個人勢までは強制できないが、スポンサー契約してる奴らは軒並み参加することになると思うな。無論、国からはえぐいぐらい金が出る。あとは自衛隊とかでゲームが得意な奴等が参加することになりそうだ」
「なるほどな。命を掛けるに足る金が出るのは救いだな」
桜庭は少し間を空ける。
「お前、なに他人事みたいに言ってるんだ?」
意図が分からず今度は俺が黙る番になる。
「お前は強制参加だ」
寝起きでアンジェラに馬乗りされていたことより訳が分からなかった。
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