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5章 平等な戦い
檻の中の獣をおちょくり倒せ
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二人が騒ぐのを外から眺めて佇んでいたのだが、聴覚が元に戻った頃合いを見計らわれた。
アンジェラがわざとらしく俺の腕にまとわりつき、画面の中にいる妹の前に連れて行く。それを見た妹がまた騒ぎ出す。アンジェラがそれを見て勝ち誇った顔をするものだから、それでまた妹はぎゃーすかと怒り狂う。ロリコン、ロリコン、ロリコンと連呼される。
ロリコンと連呼しすぎて逆に冷静になったのか息を整えると、何事もなかったかのように「その子は誰なの?」と訊いてきた。
「信じてもらえないかもしれないがとにかく聞いてくれ」
この子がエネミーだということ、アンジェラとの関係について、天樹会が本物の神様を信仰する集団だということ、模倣犯のエネミーが現れたこと、これまで知り得た全てを話した。
あの模倣犯との戦いに臨む前に交わした約束を果たす意味もあった。
妹は話した内容が信じられないのか訝しい顔をしていたが、そもそも自分自身が非現実的な存在になってしまっているからか黙っていた。
一通り聞き終えた妹は尋ねる。
「それで昨日の戦いのあとはどうなったの?」
それは俺も知りたいところであった。
「俺は最後気絶して気が付いたらアンジェラに馬乗りにされていたからわからない。そっちは無事に帰れたのか?」
「街にいた人は、ね。愛しの汐見柚子も無事」
シオミンの無事を聞いて安堵する。
「でも雪山にいた人たちは駄目みたい。記憶の全てを失ったって。中には寝たきりになった人もいるってニュースでやってる」
俺らが雪山に到着した頃にはもう既にやられた後だったのだろう。記憶を全部失うのは最悪の想定ではあるが、あった。だが寝たきりになるまでは考えていない。
「アンジェラ、どういうことだ?」
アンジェラはすでにそのことまで考慮していたのかたいして驚く素振りも見せない。
「難しいの、記憶抜くのって。型抜きって知ってる? 今はもう見る機会ないと思うけど屋台の縁日とかであった型通りにくり抜くことができれば賞金が貰えるの。アレと一緒で技巧が求められるの。やり方を知らなければ粉々になるのは当然ね。知ってても粉々にしがちだけど」
そう説明してくれたが、俺と妹、二人とも型抜きを知らず動画サイトでそれを探すことになる。妹は最初自分でもできそうと言っていたが、動画を見続けるうち、そんなことは言えなくなっていく。そして、詐欺じゃんという感想と上手くくりぬけた子供が超絶技巧を持っているとの感想を持つに至った。
「理解してくれたようでなにより」
アンジェラは動画を見終えた俺らにそう言った。
妹は不承不承といった渋い顔でアンジェラがそこにいることを認めるに至った――ように思えた。
「でもさ、別に家にくる必要ないんじゃね?」
アンジェラは微笑むばかりで答えない。
「にーちゃん! 私こいつ嫌い!」
まさか二十歳になる年になっても子供の喧嘩の仲裁に入ることになるとは思わなかった。
檻の中の獣をおちょくるようなアンジェラを窘め、獣のような妹をなだめる。それだけなのにアンジェラを構えば妹が喧嘩を売り、妹に待ったをかけるとアンジェラがチクリと刺す言葉を放つ。それの堂々巡りであった。
だんだんと腹が立ってきて「いい加減にしろ!」と一喝する。
二人がしゅんとなり、これで一段落と思いきや隣の部屋から壁を叩きつける音が聞こえる。
「さっきからうるせえんだよ!」
俺もしゅんとなった。
アンジェラがわざとらしく俺の腕にまとわりつき、画面の中にいる妹の前に連れて行く。それを見た妹がまた騒ぎ出す。アンジェラがそれを見て勝ち誇った顔をするものだから、それでまた妹はぎゃーすかと怒り狂う。ロリコン、ロリコン、ロリコンと連呼される。
ロリコンと連呼しすぎて逆に冷静になったのか息を整えると、何事もなかったかのように「その子は誰なの?」と訊いてきた。
「信じてもらえないかもしれないがとにかく聞いてくれ」
この子がエネミーだということ、アンジェラとの関係について、天樹会が本物の神様を信仰する集団だということ、模倣犯のエネミーが現れたこと、これまで知り得た全てを話した。
あの模倣犯との戦いに臨む前に交わした約束を果たす意味もあった。
妹は話した内容が信じられないのか訝しい顔をしていたが、そもそも自分自身が非現実的な存在になってしまっているからか黙っていた。
一通り聞き終えた妹は尋ねる。
「それで昨日の戦いのあとはどうなったの?」
それは俺も知りたいところであった。
「俺は最後気絶して気が付いたらアンジェラに馬乗りにされていたからわからない。そっちは無事に帰れたのか?」
「街にいた人は、ね。愛しの汐見柚子も無事」
シオミンの無事を聞いて安堵する。
「でも雪山にいた人たちは駄目みたい。記憶の全てを失ったって。中には寝たきりになった人もいるってニュースでやってる」
俺らが雪山に到着した頃にはもう既にやられた後だったのだろう。記憶を全部失うのは最悪の想定ではあるが、あった。だが寝たきりになるまでは考えていない。
「アンジェラ、どういうことだ?」
アンジェラはすでにそのことまで考慮していたのかたいして驚く素振りも見せない。
「難しいの、記憶抜くのって。型抜きって知ってる? 今はもう見る機会ないと思うけど屋台の縁日とかであった型通りにくり抜くことができれば賞金が貰えるの。アレと一緒で技巧が求められるの。やり方を知らなければ粉々になるのは当然ね。知ってても粉々にしがちだけど」
そう説明してくれたが、俺と妹、二人とも型抜きを知らず動画サイトでそれを探すことになる。妹は最初自分でもできそうと言っていたが、動画を見続けるうち、そんなことは言えなくなっていく。そして、詐欺じゃんという感想と上手くくりぬけた子供が超絶技巧を持っているとの感想を持つに至った。
「理解してくれたようでなにより」
アンジェラは動画を見終えた俺らにそう言った。
妹は不承不承といった渋い顔でアンジェラがそこにいることを認めるに至った――ように思えた。
「でもさ、別に家にくる必要ないんじゃね?」
アンジェラは微笑むばかりで答えない。
「にーちゃん! 私こいつ嫌い!」
まさか二十歳になる年になっても子供の喧嘩の仲裁に入ることになるとは思わなかった。
檻の中の獣をおちょくるようなアンジェラを窘め、獣のような妹をなだめる。それだけなのにアンジェラを構えば妹が喧嘩を売り、妹に待ったをかけるとアンジェラがチクリと刺す言葉を放つ。それの堂々巡りであった。
だんだんと腹が立ってきて「いい加減にしろ!」と一喝する。
二人がしゅんとなり、これで一段落と思いきや隣の部屋から壁を叩きつける音が聞こえる。
「さっきからうるせえんだよ!」
俺もしゅんとなった。
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