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3章 守るべきもの

勘だけではどうしようもない

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 刀を持ったモデルくんこと北御門、そして神を名乗る樹神という女性との邂逅、その後を語ろうと思う。

 巡回していた警察に北御門が銃刀法違反で手錠を掛けられた。

 バカみたいな話であるが、本当の話である。格好良く登場して、女性に説教されて締まりなく、警察に捕まるなんてオチもつけた。モデルではなくコメディアンの方が向いているのではなかろうか。

 残念ながら前科はつくことはなかった。

 手錠を掛けられたまでは事実ではあるが、そこに樹神さんが介入して事なきを得た形だ。警察も樹神さんの顔を見るなり、お偉いさんだと気付いたらしく北御門に対して横暴だった口調がへりくだるものへと変化した。

 この土地における天樹会は、法で縛られない程度には力ある宗教らしい。

 警察が去ったあと、俺は色々問い質そうとした。

 だが樹神さんにそれを止められる。今日は遅いから日を改めようということらしい。子供はもう寝る時間で、夜更しは美容の大敵、ということで押し切られた。押し切られてしまうぐらいの陽の者であった。

 次会う日取りを決め、その日は解散の運びとなった。

 とは言っても俺はバイト先に戻るだけだったが。

 バイト先では妹と桜庭が俺の帰りを待っていた。送り狼しなくて偉い、などと人をケダモノのように茶化してきたりした。下手に心配かけるべきではないと思い、襲われたことを漏らさないようのらりくらり躱していると妹が唸る。

「にーちゃんさ、何かあった?」

 元々勘の鋭い子であった。動物的勘に類する何かを持っていた。昔から俺に何かあると一番に気付くのはいつも妹だった。隠し事をすると人は何か普段とは異なる挙動をしてしまうのだろう。それを妹は直感で見抜いてしまう。

「なにもないけどどうかしたか」

 だが論理的思考がズタボロで落第点が平均点な妹は隠し事をしたことはわかっても、何を隠したかまでは推理できない。延々と二択問題を出されたりすれば逃げ場はないが、阿呆に回る知恵などありはしない。そもそも知恵が回るほど賢いのならば阿呆などとは呼ばれない。

「うーん、なんだろ。にーちゃんが気持ち悪い」

「気持ち悪いとはなんだ。これほどできた兄は地球上探しても他にはいなだろうに」

 隠し通そう。

 あの少女の目的は神に至ること。そのために記憶をを奪っている。そして、妹を殺した存在ではないという。少女の言うことを信じるならば、妹を狙わないように協定を結ぶことも可能ということになる。

 そのためには俺が少女の仲間になる選択肢を取らねばならない。その場合、工藤さんの記憶を取り戻したい桜庭と敵対することになる。少女の口振りからして、一度奪った記憶を元に戻すのは難しいのだろう。この事実もまた桜庭には伝え難い。

 ゆえに情報を全て俺自身でせき止め、よりよい解決策を探したい。

 誰を犠牲にして、何を求めるのか。

 明日、天樹会に一人で乗り込み、情報を得て、それを模索する他ない。
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