妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗

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2章 アンチもいれば信者もいる男

折れても元に戻るのが陽キャ

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「どうしてお前がそれ知っているんだ」

 妹が配信者であること、それを知っているのは桜庭と工藤さんだけのはずだ。桜庭もエネミー関連については大学連中には言わないようにしている。そもそもプロゲーマーということも公言していない。ゆえに知っているはずがないことをモデルくんは知っていた。

 その桜庭はバイトにはたまに復帰するぐらいにはなったが、講義はまだしばらく出れていないから漏れる可能性は薄い。

「どうしてって……ああ! 妹さんが配信者って言ってなかったんだっけ」

 悪びれる素振りもなく笑顔を振りまく。

 その姿に元から高かった不信感が限界にまで達する。

「二人きりで話すぞ」

 そう告げて荷物を持ち、講義室をあとにする。モデルくんも少し遅れて荷物を持って追いついてきた。モデルくんが追いつく際、見送る女性陣たちが「あ、やっと仲良くなれそうなの。頑張れー!」と意味がわからないエールをモデルくんに飛ばしていた。

 移動中、モデルくんは横に並んでくる。

 慌てて追いついたらしくリュックのチャックは開きっぱなし、手には教科書類を抱えたままだった。

「次の講義は少し時間空くけどお昼とかどこかで食べる?」

 挑発なのか、そんな呑気なことを訊いてくる。

 無視して進む。

 そうしたら肩を落としてトボトボとついてきた。

 到着したのは普段は使われない非常に大きな講演室の廊下。名のある人を呼んだ際に学生を動員して話を聞くために使われる部屋であり、その広さから専用の別棟にあるため、普段は学生が近づくことは少ない。

 廊下のベンチに二人して腰掛ける。

「妹が配信者であることをどうして知っているんだ?」

「人から聞いたんだよ。三刀さんの妹さんがそういうことしてるって」

「桜庭から聞いたのか?」

「ちがうよ。聞いたのは天樹会の会長。会長が天樹会について君が絶対に勘違いしてるぞって教えてくれたんだ」

「その会長は何者だ。俺は妹が配信者であることは誰にも言っていない」

「あーそうなんだ。それなら不信に思っても仕方ないね」

「そもそも最初話しかけられた時から不信に思ってたけどな」

「え、嘘。本当にショックなんだけど。僕何かしちゃってた?」

「ひたすら胡散臭い」

 うなだれるモデルくん。

「もう一度聞くぞ。会長は何者だ」

「……それはまだ僕の口からは言えないかな。会長ご自身の口からでないと言えない決まりなんだ」

 モデルくんは弱弱しい笑顔で俺に言う。

「悪いようにはしないから天樹会本部に来てくれないかな」

 悩んだ。

 妹が配信者であることは、桜庭と工藤さんぐらいしか知らない。その情報を知っている会長は只者ではない。俺との繋がりを知っているということは、エネミーに関して、もしかすると妹が電脳世界で生きていたことについても何か新しい情報があるのかもしれない。

 しかし、逆に言えば元凶として全ての因果を知っていただけの可能性もある。罠かもしれないということだ。

 伸るか反るか。

「すぐには決められない」

 答えは保留だ。

 妹と桜庭に話を通してから決める。それでも遅くないはずだ。

「……うん、それがいいと思うな。会長にはもう少し待って欲しいって僕から伝えとくよ」

 向こうの了承も得た。

「ところでお前の名前を知らないんだが、なんていうんだ?」

 ガックリと肩を落とすモデルくん。

「……北御門敏樹です。モデルとして地元じゃ有名だったから名前ぐらい知られてたと思ってたよ……」

 大きく落とした肩がぐぐぐっと上がり、決意したように俺を見る。

「話も終わったし、一緒にお昼でも食べに行こうよ!」

 陽の者のメンタルは最強だった。
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