妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜

宮比岩斗

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2章 アンチもいれば信者もいる男

声がデカい奴は強い

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 桜庭からの誘いに「用件を一緒に言え」と忌憚なき意見で返すと少し時間を空けて「幼馴染に会ってほしい」というものが返ってきた。

 桜庭の幼馴染といえば、記憶のほとんどを喪失した方だったはずだ。その人に俺が会ってどうしろというのだろう。あれこれ考えたが、結局憶測でしかなく聞いたほうが早いと思って桜庭の家に凸した。凸された桜庭は出かける準備万端で出迎えた。

「理由聞きたいんだろ? 入れよ」

 待ち構えていたの間違いだった。

 座布団に腰掛けて、ペットボトルから注いたお茶を飲む。

「幼馴染に俺が会う必要なんてあるのか?」

 単刀直入に訊く。

 俺らの間でややこしいやりとりは煽り合いする時ぐらいしかいらない。

「必要はない。これはただの要望。幼馴染と友達になってほしいんだ」

「友達なら元から友達だったやつとかがいるだろうに」

「記憶が失う前と失った後、それは同じ友達じゃないだろう」

「友達甲斐がない奴らだな」

「親同士が知り合いとか、切っても切れない縁があるとかじゃないと友達続けるにはヘビーなんだよ。お前みたいな、たかが友人に覚悟持って接することができる奴の方が少数派だ。希少種といっていい」

 褒められているのか、貶されているのか。

 コトがコトだけにいつもの調子で煽り合いに持っていくのも違う気がするし、どうしたものだろう。

「それで友達になるのは別に俺じゃなくてもよくないか? 俺はコミュニケーション力が高いわけでもないぞ」

 なので話を先に進めることにした。日和ったわけではない。

「オレもできることならお前みたいな社会不適合者を紹介したくない。……ただ……ほんっとーにどうしてか知らんが、お前とマイカちゃんの話をして、大会の配信を見せたらファンになっちまってな。会いたいって言って聞かないんだ」

「社会不適合者から言えるのは、お前の自業自得ということだな」

「そこをどうにか曲げてはくれないか」

「そういや前言ってたプラチナチケットまだ貰ってないなぁ」

「必ず用意する。なんなら複数枚用意するから」

「また、はぐらかされちゃあ困るから前金として貰おうか」

 ぐぬぬ、と歯を食いしばっている桜庭。

 チケットを貰えるまではテコでも動かない俺。

 その二人の均衡を崩したのは床に置いた携帯から響いた声だった。

「マイカちゃんのファンならば、会わないわけにはいきませんねー! ファンサは大事ですから!」

 その画面には鼻高々な妹の姿が写っていた。

 いつの間にか携帯にも入り込めるようになっていたらしい。

 無理を突き通す天才である妹の前には道理など存在しない。

 ゆえに、いつの間にか、なし崩し的に、桜庭の幼馴染と会うことが決まっていた。
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